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「関節リウマチ」治療最前線 Vol.2  〜治療・薬のことまで〜



 関節リウマチの治療には目標となる3つの柱があります。


●痛みをやわらげる

●関節の変形や破壊を防ぐ

●関節の機能を保つ     …です。


 これらの役割を中心となって担うのが薬物療法です。


 先ほど述べたように、現在の関節リウマチ治療は、過去の対症療法から、早期発見〜寛解を目指すものへと大きく流れを変えつつあります。その実現のために新薬が次々と開発され、薬の選択肢は広がっています。

 

 関節リウマチに用いられる薬は大きく分けて2種類あります。一つは関節リウマチそのものを治療するための薬で「疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD、ディーマード)」と呼ばれます。もう一つは関節の痛みを抑えるための薬です。

 

 代表的なDMARDは、「メトトレキサート(MTX)」です。MTXは関節リウマチの原因となる免疫細胞の過度な活動や増殖などを改善する効果があります。効果が出るまでの期間が平均2〜3週間と早く、いったん薬が効くとその効果が持続しやすいという特徴があるため、関節リウマチ治療の中心的薬剤として用いられています。DMARDは関節を構成する骨や軟骨の破壊が進むことを抑えますが、関節が破壊されることに伴う痛みを直接抑える効果はありません。そのため、関節の痛みを抑えるステロイドや非ステロイド性消炎鎮痛薬といった薬を補助的に用います。


 MTXなどの従来型DMARDの効果がない場合は、「生物学的製剤」や「分子標的型抗リウマチ薬(JAK阻害薬)」を用います。


 生物学的製剤は、最先端のバイオテクノロジー技術によって生み出された医薬品(バイオ医薬品)で、特に関節破壊の抑制効果に優れています。最初の生物学的製剤は2000年代初めに認可され、多くの症例で関節リウマチを寛解状態に持ち込むことが可能となりました。とても有効な薬ですが、点滴か注射での使用に限られること、肺炎や結核などの感染症に注意が必要であること、非常に高価であることが問題点として挙げられます。


 生物学的製剤には、先行的に開発された「バイオオリジナル」と、後続品の「バイオシミラー」の2種類があります。バイオシミラーは、バイオオリジナルの特許が切れた有効成分を用い、抗体や遺伝子組み換え技術などを応用してつくられます。バイオ医薬品の場合、薬の分子構造を完全には再現できないためシミラー(類似)と呼びます。バイオオリジナルと

効果や安全性が同等かを比較するため、実際の患者さんに使用する臨床試験を行い、安全で有効な医薬品と確認された上で製造販売が承認されることになっています。バイオシミラーはバイオオリジナルと比較して価格が6〜7割と安いため、費用負担を理由にこれまでは生物学的製剤に手が届かなかった患者さんには朗報といえるでしょう。


 分子標的型抗リウマチ薬は、近年開発された新しい薬です。リンパ球などの免疫細胞内にあるヤヌスキナーゼ(JAK)と呼ばれる酵素の働きを阻害することで、炎症や関節破壊を抑える薬です。生物学的製剤と同等、もしくはそれ以上の効果を発揮すると報告されています。また、内服が可能で利便性の高さも大きなメリットです。ただし、新薬であるため長期の副作用、安全性についての実績がまだありません。生物学的製剤と同様に高額であるのも難点で、現状では初めに使う薬ではなく、基本薬を十分に使っても効果が不十分な患者さんに使います。


 以上、さまざまな薬がありますが、どれを使うかは、それぞれの患者さんで条件が違います。痛みの程度、痛みやこわばりを感じる部位、炎症の程度、基礎疾患や合併症の有無、年齢や経済状況など、患者さん一人ひとりの状態に合わせ、もっともふさわしい薬を選択したり組み合わせたりすることが治療の鍵といえます。


 近年、関節リウマチと診断され、早期から臨床的寛解や低疾患活動性を目標に治療されている患者さんは、手術やリハビリが必要になることは少ないかもしれません。しかし、すでに関節破壊による機能障害が進行している場合、機能回復目的や変形した関節の見た目を改善する目的で、患者さんに合わせてさまざまな外科手術を検討するケースもあります。

 また、リハビリには理学療法、作業療法、装具療法があり、これらを通して体の機能回復を目指すものです。炎症の強い時期に過度に負担をかけてしまうとかえって関節破壊を進行させてしまう可能性があるので、状態に合わせてどのような治療介入が適切か専門的に検討する必要があります。


 関節リウマチは慢性的に経過するため、長い期間にわたって診察を受け、治療を続けていく必要があります。病気とは長い付き合いになるので、あせりは禁物なのですが、患者さんやご家族にとっては、長くなるほど気がかりなことも増えてきます。中でも、医療費の問題は大きくのしかかってくるでしょう。最新の治療薬は費用がかかり、大変だと思います。また障害が重くなり、日常の動作が不自由になってくれば、介助の手が必要になることもあります。このような患者さんの療養生活を支えるための、さまざまな福祉制度があります。ただし、福祉サービスは自動的に受けられるわけではなく、申請しなければなりません。ぜひ専門医や市区町村の担当窓口などに相談して、上手に活用するようにしてください。


 最後に、繰り返しになりますが、関節リウマチは病気が進んでしまう前の初期に発見し、すみやかに治療を始めることが、良い経過へと導く最重要ポイントです。ちょっとでもリウマチの心配があるなら、悩んでいる時間がもったいないです。早期受診で、リウマチとの未来、付き合い方を変えられる可能性があります。すぐに信頼できる医療機関、医師に相談してください。

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