日本で開催されたラグビーワールドカップ(W杯)2019は、日本代表の素晴らしい活躍もあり、大きな盛り上がりをみせました。今年は、いよいよ東京オリンピック・パラリンピックを迎える年です。マラソン・競歩の開催地が札幌市に決まり、皆さんのスポーツへの関心もますます高まっているのではないでしょうか。
野球やサッカーなど、小学生のころからスポーツに打ち込む子どもが増え、スポーツ外傷・障害が目立っています。
スポーツ外傷とは、スポーツをプレイ中に大きな力がかかり、起きるけがのこと。ねんざや突き指、打撲、肉ばなれ、骨折などです。
スポーツ障害は、習慣的に運動を繰り返すことや、トレーニング過多により起きる痛みなどのこと。いわゆる「野球肘(野球の投げる動作の反復によって起こる、主に肘の内側が痛む障害)」、「テニス肘(テニス、バトミントンなどラケットを使うスポーツによる、主に肘の外側が痛む障害)」、「ジャンパー膝(バレーボール、バスケットボールなどジャンプを繰り返す運動による、主に膝の前方が痛む障害)」などです。
大人に比べて、子どもの体は、①骨が弱い ②筋力が弱い ③関節がやわらかい、などの特徴があります。このため、運動によって大きな負担がかかると、骨や関節に障害を起こしやすいです。また、成長期にあり、身長が急激に伸びる時期でもあるため、骨の成長に筋や腱の成長が追いつかず、関節がかたくなりやすいことも、けがの誘因になっていると考えられています。子どもが自らスポーツ外傷・障害を予防するのは難しいので、保護者や指導者が、特定のスポーツにより起こりやすい疾患について知識を持ち、発生や再発を防ぐことが重要です。
例えば、野球肘は肘が下がった状態で投げると起こりやすいです。フォーム改善はもちろん、肘を上げて投げられるよう、肩をやわらかくすることも大切。テニス肘は、手首を外側に回したり、そらしたり(背屈)する筋肉は肘の外側に付いており、この筋肉を使い過ぎているため、付け根に炎症を起こして痛みとなります。負担の少ないラケットを選び、手首を使わず腰と肩でラケットを振るなど、正しいフォームをマスターすることも必要です。ジャンパー膝の予防には、クッション性・ホールド性に優れたシューズを選び、入念なストレッチや膝へのサポーター装着、運動後のアイシングなどが有効です。
このようにスポーツ障害の原因として、身体の状態やフォーム、練習方法、ケアなどに問題があることが考えられます。一つずつ解決していくことが鍵になります。
また、子どもは痛くても、保護者や指導者になかなか言い出せません。練習ができないことや試合に出られないことが嫌で、痛みを隠しているケースもあるでしょう。わずかな痛みや腫れ、関節の動きの悪さなど、子どもの症状を見逃さないでほしいです。早期に発見・治療できれば、それだけ早く、簡単な治療で症状を治すことができます。また、子どもたちの「競技を休みたくない」という気持ちを可能な限り優先した、スポーツを続けながらの治療も、早期であればあるほど可能なケースが多くなります。
高齢化社会の進展に伴い、中高年のスポーツブームも活発になっています。ゴルフやテニス、ランニングに汗を流している中高年の方も多いでしょう。また、健康のために…とウォーキングや筋トレなど、日常的に運動する習慣のあるシニア層が増えています。適度な運動は、健康増進効果、介護・介助予防に非常に有効であることは、医学的にも確認・証明されています。ただし、やり過ぎは禁物です。スポーツ外傷・障害や突然死のリスクを高めることにもなりかねません。
年齢とともに体力や筋力、骨量、バランス感覚の低下など、さまざまな身体機能が衰えてきます。それを自覚せずにスポーツを始めると、体がついていかず、けがをしたり、体調不良を引き起こしたりすることになります。
①:張り切り過ぎない、頑張り過ぎない ②:スポーツをする前後にストレッチなどの準備運動をする ③:こまめに休憩をとる ④:息切れや動悸などの症状が出た場合は休む ⑤:体に痛みや異常を感じたら、すぐ医療機関を受診する、といったことを守りながら、マイペースにやっていきましょう。
スポーツ外傷・障害の診断・治療や予防をしたり、スポーツによる健康維持・増進をアドバイスしたり、サポートする専門家が、スポーツドクターという資格を持っている整形外科医です。
「なるべく早く、そしてスムーズにスポーツに復帰できるように治療してほしい」「スポーツによるけがの再発を防ぎたい」「フォームなどを改善して、より高いパフォーマンスが出せるようになりたい」。そんな思いに応えるのがスポーツドクターの役割です。
一方で、「すごく運動しているわけじゃないのに、加齢とともに肩や肘、股関節、膝といった部位が痛み出した。原因を知り、治療をしたい」「高齢でも、健康のために長く続けられる運動のやり方を教えてほしい」といった訴えに応えるのもスポーツドクターの役目です。
「スポーツ」や「肩や肘、股関節、膝といった運動器」にかかわる整形外科的な症状でお悩み・お困りの方は、ぜひ一度、スポーツドクターの資格を持つ整形外科医に相談してみてはいかがでしょうか。
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