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  最近、テレビや雑誌等でよく見かける、ロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)についてご存じでしょうか。

 

 「言葉は聞いたことがあるけど、詳しい内容は知らない」、「言葉すら聞いたことがない」という方のため、今回はロコモについてとそれに伴う転倒リスクについて説明させていただきます。


 まず第一に、ロコモとは、加齢に伴う筋力の低下や関節・脊椎の病気、骨粗鬆症などにより運動機能(移動機能)が低下し、寝たきりなど介護が必要な状態になっている、またはその状態になるリスクが高い状態を示す言葉です。


 この言葉自体は、2007年に日本整形外科学会が国民にこの実情を理解してもらい、発症を予防しようということで提唱した概念ですが、提唱した後もしばらくは国民への周知、理解を得ることは難しく、13年経った今でも国民の認知度は44.8%、内容の理解度は18.7%(公益財団法人 運動器の健康・日本協会調べ)と決して高い数値とは言えないものとなっています。また、症状に関しても多岐にわたり、関節痛や背部痛、関節や脊柱の機能低下、それによる歩行速度の低下、歩行時の易転倒性などがみられ、大部分の方は自身がロコモであるという自覚がないまま生活をしているということも認知度・理解度が高くない原因の一つであると思います。


 したがって今回は、簡易的に自己チェックが可能な「ロコチェック」を紹介させていただき、何がロコモに当てはまるのかということと、現在のご自身の身体状況を改めて考える時間を作っていただけたらと思います。

 

「ロコチェック」 ①片脚立ちで靴下がはけない ②家の中でつまずいたり滑ったりする ③階段を上がるのに手すりが必要である  ④家の中のやや重い仕事が困難である(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど) ⑤2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である ⑥15分くらい続けて歩くことができない ⑦横断歩道を青信号で渡りきれない    (日本整形外科学会 ロコモONLINE より)

 

 以上、7つの質問が簡易的なロコモの自己チェックになります。日本整形外科学会では1つ以上当てはまればロコモの疑いありとされています。しかし、あくまでも疑いということでロコモであると断定は出来ませんが、もし1つでも当てはまったという方は今からでも予防のための身体作りをしていくことが必要になっていきます。また、ロコモの可能性がある方は今回のタイトルにある通り、屋内外における転倒のリスクが増加し、ケガをしてしまうリスクも高くなる可能性があります。


 では次に、なぜロコモが転倒リスクに繋がるかを考えていきましょう。

 

 まず、転倒リスクとは内的・外的要因、行動要因の3つに大別されます。

1つ目の内的要因とは、加齢変化や身体的疾患、薬物等のその人自身の身体的な問題のことをいいます。

2つ目の外的要因とは、段差や履物など周囲の物的環境の問題のことをいいます。

3つ目の行動要因とは、その人自身の「動きたい」という意思や周囲の「こう動いてほしい」などの意図のことをいいます。


 これら3つの要素が合わさり、転倒予防策を上回っている状態を転倒リスクが高い状態といわれています。また、転倒予防策よりも3つの転倒リスクの要因が大きければ大きいほど外傷のリスクが高まるともいわれています。




 ここで、先程のロコモについても考えてみましょう。


 ロコモとは様々な要因により運動機能が低下した状態のことを指します。ということは転倒要因の1つである、内的要因に当てはまると考えられます。

 

 また実際に、立ち上がりテストや2ステップテスト、ロコモ25等のロコモ度テストと簡易式転倒スコアを比較した実験があり、立ち上がりテストでは167例中117例、2ステップテストでは167例中76例、ロコモ25では167例中121例がロコモに該当し、簡易式転倒スコアでは転倒低リスク群が167例中98例、高リスク群が69例であったとされています。その結果からロコモ度テストの全てにおいて、転倒高リスク群でのロコモ該当者は低リスク群と比較し、有意に多いとされました(坂本和歌子 ほか:ロコモ度テストと転倒スコアの関係,昭和学士会誌 第77巻 第2号:2017)。


 この実験にもあるように、ロコモと転倒リスクは密接に関わっており、ロコモの予防が転倒予防を行うために必要な要素の1つであると考えることが出来ます。つまり、ロコモを予防するための運動自体が自身の転倒を防ぐための運動となっており、自身や周囲の介護負担予防のために今後必要になってくると思います。

 

 現在、新型コロナウィルスによって外出を自粛している方も増加し、それに加え降雪や路面凍結による外出控えなどによって身体を動かす機会が減少している方が多くなってきていると思います。そうした自粛生活が長くなるにつれてロコモになってしまう可能性も高くなり、新型コロナウィルスが終息した後に外出しようとしても身体が思った通りに動かず、転倒してしまうということもあるかもしれません。

 

 こうした事態を防ぐために今からでも自宅でできるトレーニング等をしてみるのはいかがでしょうか。当院リハビリではそうした方のために、自宅でできるトレーニングなどのアドバイスをさせていただくことも可能ですので、興味がある方は是非来院していただき、当院医師や理学療法士に相談してみてください。






 

  長時間歩くと太ももの付け根が重だるい感じになり、やがて重だるさは痛みに変わり、症状が進行すると、安静にしていても痛むようになる─ このような股関節の痛みを訴える人は、中高年の(特に女性の)方にとても多いです。

 股関節は人体では一番大きな関節であり、立っている時や歩いている時、体重の3〜5倍の圧力がかかる最も負担のかかる関節です。股関節が痛む要因はさまざまですが、激しい痛みを伴う場合、そのほとんどが「変形性股関節症」という病気によるものです。


 股関節は、左右の脚の付け根にあり、骨盤と大腿骨をつないでいます。骨盤側には臼蓋(きゅうがい)があり、大腿骨の先端部分には大腿骨頭があります。臼蓋と大腿骨頭の表面は、すべすべの関節軟骨で覆われていますが、その軟骨がすり減ってしまう病気が変形性股関節症です。日本では、原因の約8〜9割が生まれつきの「臼蓋形成不全」です。大腿骨頭を覆う臼蓋の面積が狭いため、肥満や加齢などで股関節への負担が大きくなると徐々に軟骨がすり減って脚の付け根が痛むようになります。股関節は膝の関節と違って、外から腫れの具合が見えません。ひどい痛みの理由が分からずに苦しむ方もいます。


 臼蓋形成不全は女性に多いため、変形性股関節症の患者さんも約8割が女性で、発症するのは40歳から50歳代が中心です。国内に潜在的な患者さんが500万人以上存在すると推計されています。日本の人口を1億2000万人と仮定して単純計算すれば、100人あたり4人以上は股関節に潜在的な痛みやトラブルを抱えていることになります。


 変形性股関節症は進行性の病気です。長い時間をかけて少しずつ悪化します。進行の度合いは大きく4段階に分けられます。


・前期…関節軟骨はまだ保たれています。この時期は長時間歩行後に脚がだるい、疲れ易いなどの症状がある程度です。


・初期…関節軟骨の表面に傷がつき、少しずつ削られている段階です。「なんとなく股関節がだるい」「股関節に引っ掛かりやきしみなどの違和感を感じる」「立ち上がりや歩き始め、階段を上り下りするときに股関節が痛む」などが代表的な初期症状です。


・進行期…軟骨がさらに削られて部分的になくなってしまい、骨と骨とが直接ぶつかり合うようになっている段階です。動くたびに強い痛みを自覚するようになり、靴下を履くことや、足の爪切り、和式トイレの利用などが困難になります。


・末期…進行期で痛みを我慢し続けると、末期段階にまで達します。軟骨が削られてほとんどなくなった状態で、骨同士が激しくぶつかり関節の変形が進んでいる段階です。安静時も痛むようになり、歩きにくくなるなど日常生活全般が困難になってきます。痛みを少しでも避けようと、自宅に閉じこもりがちになってしまう方も少なくありません。重症になると、突き上げるような痛みが走り、就寝中に寝返りを打つだけで激痛に襲われ、睡眠をとることもままならなくなる患者さんもいます。


 関節軟骨は一度傷つくと回復は難しく、徐々に痛みや変形が進行していきます。残念ながら、放っておけばおさまるというものではなく、治療をしない限り止めることはできません。重症化してからでは、日常生活への影響もそれだけ大きくなるので、できるだけ早期に治療を始めてほしいというのが、医師としての願いです。立つ、座る、歩く、かがむなどの動作時に痛みや違和感を覚えたら、早めに整形外科を受診してください。


 治療は、体重管理(ダイエット)と股関節まわりの筋力維持・向上(筋トレ、ストレッチなど)、生活動作の指導(股関節に負担を掛けない動き方、杖の使い方、悪化させない生活の知恵など)を基本に、痛みの軽減や症状の進行の抑制を目標とする「保存療法」と、痛みの原因を根本的に取り除こうとする「手術療法」があります。


 一般的に、前期から進行期は、薬物療法(内服薬、外用薬、座薬など)を柱とした保存療法によって股関節の痛みをコントロールします。ある程度の期間、保存療法を続けても痛みが改善せず、股関節の変形も進んでいる場合は、手術療法が次の選択肢になります。代表的な手術として「骨切り術」と「人工股関節置換術」があります。


 「骨切り術」は、自分の骨盤や大腿骨の一部を切断し、損傷の少ない軟骨面を荷重面に移動させることで疼痛を取り除く手術です。自分の関節を温存できるのが利点で、体内に異物を入れる必要がないので、心理的に患者さんに受け入れられやすい術式といえます。


 「人工股関節置換術」は、関節軟骨が消失し、変形して傷んだ股関節を取り除き、金属やセラミック、ポリエチレンなどでつくられた人工股関節に置き換えるものです。痛みの原因になっている部分をすべて人工のものに取り替えるので、手術後にはこれまで悩まされていた股関節の痛みがほとんどのケースで完全になくなるというのが、この術式の最大の利点です。


 どちらを選択するかは年齢や病態、人工関節の耐用年数などが考慮されます。一般的に、年齢が若い患者さんで、病状が進行期の中でもそれほど進んでおらず、活動性が高い方には骨切り術を、高齢の患者さんで、病状が進行期や末期にあり、強い痛みがある方には人工股関節置換術を勧めることが多いと思います。その理由としては、人工股関節置換術を若い患者さんに行うと、活動性が高いために人工関節が早く緩みやすく、再置換術を行わなければならない可能性が高くなるからです。


 ただし、これまで耐用年数が10〜20年といわれていた人工関節も、近年は材質やデザインなどの進歩により、術後20〜30年は持つようになってきました。実際に診療の現場でも、大きなアクシデントがない限り、生涯、人工股関節の入れ替えを必要としないケースが大部分です。そのため、40代、50代の若い患者さんでも人工股関節手術を選択する方が増えてきました。日本人工関節学会によると、2018年に人工股関節置換術を受けたのは約11万人。既往歴がなく健康なら、手術の大半はスムーズに行われ、安定した治療成績が報告されています。


 手術に対する患者さんの不安材料として「本当に痛みが取れるのか?」「術後、普通に歩くことができるのか?」「手術をしたら、できないことが増えるのではないか?」「手術は安全なのか?」ということをよく耳にします。人工股関節置換術の場合ですが、手術後はほぼすべてのケースで痛みが消え去り、スムーズに歩くことができます。術後のある程度の期間が経過すれば、激しいスポーツでなければ運動も自由にできますし、ほとんど行動制限もありません。痛みがなくなるので、むしろできるようになることの方が圧倒的に多いです。


 「どのタイミングで手術を受けるべきか?」という質問をよく受けます。絶対的な基準はありませんが、症状の軽いうちは保存治療で痛みをコントロールし、病状が一定の段階を超えたら、そのときは手術によって完治させるというのが私の基本的な考えです。股関節の痛みが強くてやりたいことができなくなったり、日常生活が困難になってきたりしたら、手術を検討するタイミングといえるでしょう。


 痛みの感じ方も、治療に何を求めるのかも人それぞれです。また、生活の中で何を不自由に思っているのか、今後どういった生活を望んでいるのかも患者さん一人ひとり違います。本人の認識と意欲が何よりも大事で、同じ症状であっても「保存療法か、手術療法か」は年齢や仕事、趣味、人生設計などによって変わってきます。主治医とよく相談してタイミングとを逃さないこと、そして、自身が納得のいく治療法を選ぶことが重要だと私は考えています。


 新しいトピックとしては、自身の血液から抽出した血小板を患部に入れて修復を促す再生医療「PRP注射」、その変形性股関節症への応用が始まっていることが挙げられます。PRP注射とは、米大リーグ、ヤンキースの田中将大選手やエンゼルスの大谷翔平選手が肘の治療に使った治療法です。PRPは血液を遠心分離してできる「多血小板血漿」の英語の略。治療は損傷した組織を修復する「成長因子」を多く含む、血小板が高濃度な血漿(PRP)を患部に注射する再生医療で、自らの血液を使うためアレルギー反応などの副作用が少ないとされます。まだ先のことになりますが、治療法として確立すれば、保存療法と手術療法との間の「第3の選択肢」として期待されています。



 最近、多くの医療機関で採用されており、当院も採用している院外処方についてお伝えしたいと思います。


 院外処方とは、厚生労働省が進める医薬分業の制度に伴い行われております。医師がお薬を渡す代わりに院外処方箋を発行し、保険薬局で薬剤師が処方内容や薬の飲み合わせ等を再確認し、お薬を渡すシステムです。

 

 処方箋を発行することにより、他の病院でもらった薬や市販薬・健康食品などの飲み合わせを薬剤師が、より専門的な立場でチェックすることが出来、安心して薬を服用することが出来ます。院外処方箋は病院・自宅・職場の近くなど、どこの調剤薬局でも投薬してもらえますが、大事なことは“かかりつけ薬局”を作ることです。


 かかりつけ薬局は、薬歴管理で重複投与や相互作用の副作用を防ぐことが出来ます。

薬局では“お薬手帳”の有無を聞かれます。お薬手帳は ①服用中の薬 ②過去に服用した薬 ③副作用があったり、体質に合わない薬 ④アレルギー歴 などの記録がされています。 

 

 お薬手帳があれば転居や災害時に持病の薬がスムーズに処方することが出来ます。東日本大震災や熊本地震の発生時には避難所や他県に避難された方もお薬手帳があれば適切にお薬がもらえたようです。


 地震などの災害はいつ、どこで起こるかわかりません。仕事先にいる時かもしれませんし、旅行に出かけている時かもしれません。お薬手帳は普段から持ち歩く事が必要です。 それが出来ない時は、せめて災害が起こった時にすぐ持ち出せるようにしておくことが大切です。最近はスマートフォンに保存できる電子お薬手帳も普及しています。詳しくは薬局でおたずね下さい。


 昨今は、ジェネリック医薬品が普及し、覚えにくい一般名(成分名)の処方薬も多くなっています。正確に伝えるためにも、普段からお薬手帳を活用し、医療機関受診時は医師へ、薬局を利用の際は薬剤師に提示し、安全に安心して薬剤を服用出来るように心がけてみて下さい。


 薬局でお薬を受け取る際は、ご本人が薬剤・投与日数・服用方法の説明を受け、薬剤を受け取って下さい。やむを得ず家族の方が受け取る際も薬剤師からの説明を受け、お薬手帳等を持参し、服用される方へお伝え下さい。


 ちなみに、お薬手帳持参した方は薬局の窓口負担額が少なくなります。今後の健康管理にもお薬手帳をお役立て下さい。





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