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 転倒は屋外で起きる印象があるかもしれませんが、実は室内も多いです。


 札幌市消防局の救急搬送データをみると、発生場所の半数近くは住居。道路や交通施設の4割弱を上回っています。自宅に潜む危険を意識する必要があります。自宅で転倒しやすい場所は、浴室など濡れたところ、階段など段差があるところ、片付いていないところです。日常の注意点としては、足のケアをすること。外反母趾(ぼし)や巻き爪・陥入爪などがあると、歩きにくくなって転倒しやすくなります。また、つまずくことが増えてきたなと感じたら、つまずいた場所や時間帯、そのときの様子、服装などを日記に付けておくといいでしょう。つまずきやすい状況を自覚でき、転倒予防の指標になります。


 筋力や柔軟性があり、関節の可動範囲も広いうちは転びそうになっても踏みとどまれますが、加齢とともにこうした力が弱まっていきます。階段昇降やウォーキング、ラジオ体操など適度な運動やストレッチで、筋力と柔軟性を維持することも非常に大切です。


 室内での転倒の環境的要因として、玄関の上がり框(かまち)や階段などの明らかな段差よりじゅうたんの沈み込みや畳の継ぎ目など1〜2cm程度の小さな段差に足を引っ掛ける例が多いです。こうしたちょっとした身の回りの生活環境を改善しておくことも、転倒のリスクを減らすことにつながります。以下、家の中で転ばないよう注意すべきものと、あるといいもの、を列記するので参考にしてください。


■注意すべきもの

・じゅうたんやマットなどの敷物(端のめくれ、たるみ)

・電気製品のコード、電話線

・雑誌やリモコン、ゴミ袋など床の上の小物

・足元など見えづらい場所の照明、スイッチの位置 など


■あるといいもの

・階段や風呂場などの手すり

・洗い場や浴槽などの滑りにくいマット

・楽な姿勢で出し入れできる収納 など


 万が一、転倒してしまった時の応急処置を紹介します。

 スポーツ中はさまざまなけがをする可能性があり、スポーツの現場でけが人が出た時、病院や診療所にかかるまでの間、けがを悪化させずに、けがの程度を最小限にするために行う応急処置を「RICE(ライス)」といいます。スポーツ中だけでなく、打撲や捻挫など日常生活でよく起こるけがの多くに対応できる応急処置ですので、知っておくと役立ちます。


 けがの応急処置には4つのポイントがあり、①レスト(安静)②アイス(冷却)③コンプレッション(圧迫)④エレベーション(患部を持ち上げる)で、それぞれの英語の頭文字をとり、RICEと呼ばれます。


 例えば、足首を捻挫した場合、痛めた靭帯のまわりに内出血が起こります。放っておくと、患部周辺の筋肉など皮下組織に血液成分が広がってしまいます。内出血が進行すると患部が腫れて症状が悪化し、回復が遅れる要因となります。けがの範囲が広がる「2次損傷」です。RICEはこうした流れを食い止めるために行います。


 「安静」は損傷部位の腫れを防ぎ、ケガをしているところを無理に動かしたり、体重をかけたりしないようにすることが目的です。そえ木やテーピングを行い、損傷部位を固定します。「アイシング」は痛みを軽くして内出血や炎症を抑えるために行います。ビニールやアイスバッグに氷を入れて患部を冷却します。患部の感覚がなくなったらはずし、また痛みが出てきたら冷やします。冷却時間は、20分冷やして60分中断するサイクルを基本に、1〜2日間続けてください。


 ただし、冷やしすぎると凍傷になる恐れがありますので、氷を直接当てずにタオルなどを巻いてから当てるようにするといいでしょう。「圧迫」は内出血や腫れを防ぐために行います。腫れが予想される部分にスポンジやテーピングパッドを当て、テーピングや弾性包帯(伸縮包帯)で軽く圧迫気味に固定します。氷を患部に固定するときに同時に行うのがいいです。圧迫が強すぎると、血流を悪くしたり、神経を圧迫したりすることもありますので、強さを加減して、しびれが出てきたらいったん圧迫をゆるめ、しびれがとれてから再び圧迫します。「患部を持ち上げる」のは、損傷部位を心臓より高く挙げるようにすることで、腫れの防止と軽減を図ることが目的です。イスや台、クッションや枕など、手頃な高さのものを探して、患部をのせておきましょう。


 RICEは、あくまで「応急処置」であり「治療」ではありません。RICE処置をしたからといってすぐにケガが治るわけではありません。特に捻挫や肉離れは軽度だからといって放っておくと、ケガが長引いて治療が難しくなる場合があります。RICE処置のあとは、必ず整形外科を受診してください。


 北海道では厳冬期の12月から翌年3月ごろにかけて転倒による救急搬送件数が急増します。路面凍結が主な原因で、打撲などの軽症で済む人がいる一方、腰部骨折や頭部損傷など大きなけがを負うケースもあります。

 

 札幌市消防局によると、昨シーズン(令和2年11月から令和3年3月)の雪道転倒による救急搬送者数は850人。内訳は70歳以上46.1%、60~69歳18.7%、50~59歳15.8%―など中高年層が約8割を占めます。

 

 けがの程度は軽症59.4%、中等症39.6%、重症1%で、頭部外傷や手首骨折などが目立ちますが、大きくバランスを失いもんどりうって倒れることも多く、腰や背中から路面に落ちて、大腿骨近位部(股関節など脚の付け根)や腰椎、また背骨など体の重要な部分を傷めてしまうケースも少なくありません。

 

 路面の凍結は、積もった雪が日中の気温上昇などで一度解け、その後、零度以下に下がることで起きます。交通量の多い歩道や車道は雪が踏み固められて平坦なためツルツルになりやすいです。雪道や凍結した道路で転びやすいのはもちろんですが、寒さで体が縮こまると、普段ならなんでもない場所でも転びやすくなります。


 冬本番、雪道や凍った路面で転倒しないために、次のことを心掛けてください。


体を動かし、温めてから外出する…暖房のきいた暖かい部屋から家の外に出ると、急激な 温度差で体がぎゅっと縮こまります。筋肉が硬くなってしまうと、知らず歩幅が狭くなったり、背中が丸くなったりして、体のバランスが崩れやすくなります。寒い時期の外出は、いきなり冷たい外気に身をさらすのは避け、出かける前に家の中で数分間足踏みをするなど体を温めるといいでしょう。


靴底がスタッドレスタイヤのように軟らかく溝のあるものを選ぶ…底が平らで滑りやすい靴を履くのは禁物。近年は靴底にピンスパイクやガラス繊維などが入った防水性・防湿性の高い靴も登場しています。濡れない、冷えない、滑らないといった機能性の高い靴選びが大切です。


足の真ん中に重心をのせて、ゆっくりと歩く…転倒は体のバランスが崩れることによって起こります。雪道や凍った路面は、やや前かがみの体勢で小さな歩幅で歩きましょう。後傾の姿勢はかかとから着地するため転倒しやすいです。靴の裏全体を垂直に降ろして均等に荷重をかける足運びを心掛けてください。体の重心を足の真ん中にのせて歩くイメージです。手でバランスを取ることも重要。凍結時はすり足も有効ですが、路面が荒れているとつまずく原因になるので、少し浮かせた状態で歩く動作も必要です。


なるべく手荷物を持たない…荷物を持っていると、手でバランスを取りにくくなります。特に両手に荷物を持った状態だと、転んだ時に手をついて体をかばうこともできないので非常に危険です。荷物はリュックに入れて背負うのがお勧め。万が一、仰向けに転倒した際にも、リュックがクッションの役目を果たして後頭部や背中、腰をかばってくれます。また、寒いとついポケットに手を入れたくなりますが、これもとっさの時に手で体を支えることができず危険です。手を振って元気に歩くことができるように、暖かい服装と手袋を付けて外出しましょう。





 今週に入り降雪が本格的となってきました。皆さまの中にも、寒さや除雪により頚や肩・腰などに痛みを伴っている方も多くいらっしゃると思います。その中には、「これぐらいの痛みなら我慢できる」、「病院に行きたいけど時間がない」と考えている方も少なくはないと思います。その方々のためにも、今回は様々な症状の中から「肩の痛み」に関して着目し、自宅で出来る肩のセルフケアを皆様に提案していきたいと思います。


 「肩の痛み」というものは人によって症状や痛む場所が様々だと思います。肩関節自体が痛む方、肩から腕にかけて痛む方、首すじから肩甲骨周囲が痛む方など、ひとりひとり症状は異なっています。また、痛みが出てきたきっかけや原因も事故や怪我によるもの、肩や腕を使い過ぎたことによるもの、加齢による組織の変性など多岐にわたってあると思います。


 そのため、実際の治療においてもその状態によって内容が変わっていきますが、どの方でも早期の治療が重要になっていきます。もちろん、その早期の治療に関しては軽度であれば自宅でのセルフケアで症状が緩和していくこともありますが、事故や怪我など外的要素によって痛みが生じている方や、着替えや整容などの生活動作に強く制限が生じている方は整形外科の受診をお勧め致します。また、今回のセルフケアの実施においても、痛みが強くなった場合や周辺部位が痛くなった場合は近くの整形外科医へ相談することをお勧め致します。そのことを念頭に置いていただき、自宅でのセルフケアを行っていただけると幸いです。


 まず、「肩の痛み」に対して推奨される治療としてはストレッチや体操などの運動療法、温熱治療や電気治療などの物理療法、神経ブロックやトリガーポイント注射などの局所注射が挙げられます。


 日本理学療法士協会が作成している理学療法診療ガイドライン第1版(以下、ガイドライン)においても、ストレッチやホームエクササイズなどの運動療法により疼痛や可動域を改善させることが可能であるとされており、さらに運動療法とともに物理療法や局所注射の併用をするとより効果的であると言われています。しかし、あくまでも短期間で症状が無くなるわけではなく、長期的に治療を行うことが必要であるとも言われています。


 そのため、早期にセルフケアを行うことで、症状の悪化を予防することが重要であると考えます。前述した3つの治療のうち、自宅で行うことが出来るものは運動療法と物理療法になります。その中でも比較的簡単であり、一人でも行うことが出来るものを紹介させていただきます。


①痛みが出ている肩や腕を温める

 ・自宅にあるきれいな濡れタオルを用意し、レンジで使用できる袋に入れる。

 ・濡れタオルを入れた袋をレンジで少しだけ温める。(やけどに注意)

 ・温まった濡れタオル入り袋をフェイスタオル等で温かさを感じる程度の厚みでくるむ。

 ・患部に当てて使用する。


 もしタオル等の準備が難しい場合は、市販の貼るカイロでの代用も可能です。しかし、どの方法においてもやけどに注意して行ってください。また、可能であれば座った状態や寝た状態など、自身が楽な姿勢で10~20分前後は継続して行うようにしてください。

 ※痛みが強く生じている場合は温熱療法が合わないことがあります。その場合は無理に温めず、ご自身の楽な姿勢で身体を休ませてください。


②肩甲骨を回す運動


 ・座った状態で片方または両方の肩甲骨全体を時計回り、反時計回りに回す

 ・1日10回×3セット程度を肩または腕周り等に痛みが出ない範囲で行う

 ・肩甲骨を回す際、腕はなるべく脱力し肩甲骨のみを動かすように注意する


↓イラスト参考にしてください(肩甲骨を回す運動)



③肩回りをほぐす運動


 ・頭の後ろで手を組み、痛みが出ない範囲で腕を開き胸を張るように行う

 ・1日10秒×3回程度行う

 ・腕を上げるのが辛い場合は、腕を下におろした状態で胸だけを張るように行う


④腕を後ろに伸ばす運動


 ・腕を後ろで組み、痛みが出ない程度に胸を張りながら腕を後ろに伸ばす

 ・1日10秒×3回程度行う

 ・腕を後ろに伸ばすのが辛い場合は、腕を後ろに組んだ状態で胸だけを張るように行う


以上が、自宅で一人でも行うことが出来る運動療法と物理療法になります。濡れタオルやカイロを用いた物理療法以外の運動療法は、あくまでも痛みが出ない程度に行うことが重要です。ガイドラインにおいてもストレッチ等の運動に関しては痛みを伴うものよりも、痛みのない範囲で運動を行った方が良い効果が得られるとされています。そのため、強い痛みを伴うような無理な運動は逆効果になってしまうということを理解した上で行ってみてください。


 簡単にではありましたが、今回は「肩の痛み」に関するセルフケアを紹介させていただきました。最初に書かせていただいたように、「肩の痛み」とは人によって原因が多岐にわたります。そのため、今回紹介させていただいた運動が体に合わない方もいらっしゃると思います。また、温める物理療法においても状態によっては推奨できない場合もあるため、もしセルフケアに関して不安感がある場合や運動が自身の体に合わない場合は整形外科を受診することをお勧め致します。


 最後に、今回紹介した運動療法や物理療法は治療のごく一部になります。他の運動療法等にも興味がある方はぜひ当院の医師、理学療法士に相談してみてください。


<参考文献>

公益社団法人 日本理学療法士協会 理学療法診療ガイドライン 第1版 p233‐p276