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 足底腱膜炎、扁平足、外反母趾… 痛みや変形、我慢は禁物!!


 今回のテーマは脚ではなく「足」。足首から下の、英語でいうFoot(フット)の部分です(ちなみに、脚は英語でいうとLeg(レッグ)。太ももの付け根の関節から下全体を指します)。人間の全身には約200個の骨がありますが、その約1/4にあたる52個の骨がくるぶしからつま先までの足に集中して、パズルのように精密に組み合わさり、アーチ状の構造をつくっています。家を建てる際に一番重要なのは基礎(土台)だといいます。土台がしっかりしていないと、時間が経つにつれて、じわじわとほころびが出てくるものです。人間の身体も同様です。足元に多数の骨が精密にかみ合う、石積みのアーチ橋のような構造を備えることで、体重の数倍の重みがかかってもびくともしない強さを持っているのです。


 何らかの原因でこのアーチ構造が崩れてしまうと、足にかかる負担が大きくなり、全身にさまざまなトラブルが起こりやすくなります。例えば、歩行障害をはじめ、変形性膝関節症、腰痛、肩こり、フレイル(虚弱)、サルコペニア(筋力低下)、転倒、心臓病、脳卒中などのリスクが高まります。高齢になっても“歩ける足”を保つには、若い頃から足の健康に関心を持ち、足の痛みやしびれ、違和感を「見逃さない」「放っておかない」「あきらめない」ことが大事。軽視すると寝たきりにも直結する足のトラブルは、早い段階できちんと治療し、重症化を防ぐことが肝心です。


 足のトラブルや悩みを抱えた患者さんはどの診療科に分からずに多くの診療科を回る難民状態になりがちです。近年、診療科の枠を超え、足やフットケアの専門外来を開設したり、「足病専門」を標榜したりする医療機関も増えていますが、近くにない時はまず整形外科の受診をおすすめします。整形外科ではくるぶし、かかとから足の甲、足裏、つま先まで足全部を、筋肉も骨も神経もすべて含めてその総体として診察します。その上で、例えば、糖尿病性の潰瘍や壊疽が疑われれば糖尿病内科や形成外科に、皮膚炎や巻き爪が原因になっていると考えられるなら皮膚科に、というように他の診療科へ紹介する窓口になることも多いです。整形外科を足のトラブルの“よろず相談所”として上手に利用してもらいたいです。


 子どもから高齢者まであらゆる世代の人が悩まされる足のトラブルですが、中でも40代以上の中高年の方が受診されることが多いです。患者さんの悩みとしては「痛い」「しびれる」「疲れやすい」という訴えが大半です。痛みの原因として最も多いのは、朝起き抜けにかかとが痛む「足底腱膜炎」。そのほか、親指が外側に曲がる「外反母趾」、ランナーに多く発症する「アキレス腱炎」などが挙げられます。しびれる原因はなかなか分かりづらいのですが、くるぶしとかかとの間にある神経や血管の通るトンネルが狭くなり、神経が圧迫される「足根管症候群」、足の中指と付け根部分の神経が刺激されて起こる「モートン病」などがあります。足が疲れやすくなる背景には、“土踏まず”がつぶれてしまう「扁平足」があることが多いです。


 足が痛い、しびれる、なんだか疲れやすい、ずっと違和感を感じている。そんな悩みを抱えた患者さんが受診されると、整形外科ではまずは視診や触診によって患者さんの姿勢や歩き方などを確認し、次にその患者さんに必要な検査を行います。骨の形や位置を確認できるレントゲン撮影、筋肉や靭帯など軟らかい組織や、関節の炎症の有無を調べるのに有効な超音波(エコー)検査のほか、状況に応じてCT検査やMRI検査を受けていただくこともあります。こうした問診や検査の結果から総合的に病気・病状を診断し、治療方法を検討していきます(所見によっては他診療科を紹介します)。


 日々、診療している足のトラブルの中でも、特に多くみられるのが「足底腱膜炎」「扁平足」「外反母趾」です。


 朝起きて一歩目、かかとに走る激痛が特徴的な足底腱膜炎。足の裏には、かかとの骨から足先にかけて足底腱膜という線維の束が扇状に伸びていて、土踏まずのアーチ構造を支え、歩くときの衝撃を和らげる役割を果たしています。ところが、歩きすぎや立ち仕事など長年の負荷の繰り返しによって、足底腱膜とかかとの骨がつながっている部分が傷んだり、炎症を起こしたりして痛くなることがあります。これが足底腱膜炎です。朝痛むのは、寝ている間に硬くなった腱膜が急に伸ばされるためで、しばらくすると腱膜が緩んで痛みは軽くなります。痛みが長引くケースもあり、毎朝の激痛に耐えかねて受診される方が多いです。治療法は、腱膜やアキレス腱のストレッチが基本。かかとにかかる負荷を分散させるインソール(中敷き)を靴に入れるほか、炎症を抑えるステロイド注射や鎮痛剤を使うこともあります。それでも改善しない重症の場合は、傷んだ腱膜の一部を切り離す手術も選べます。また、一部の医療機関では、結石を壊す治療でも使う衝撃波を患部に当て、痛みを伝える神経を壊したり、傷んだ腱膜の修復を促したりする治療も行われています。足底腱膜炎の原因や症状を十分理解した上で、自分に合う治療法を選択することが大切です。


 扁平足は、「子どもの土踏まずが小さい」と気にする親御さんも多いですが、必ずしも病的な状態ではなく、成長に伴って解消することが多いです。子どもの場合、痛みを伴わなければほとんど問題になりません。


 一方、早期発見が欠かせないのが、老化に伴う“病的な”扁平足です。中高年の扁平足で特徴的なのは「外反扁平足」と呼ばれるケースです。扁平化が進んだ結果、かかとの骨が内側に傾いてしまったものをいいます。アーチの一番高い場所にある舟状骨(しょうじょうこつ)を支える後脛骨(こうけいこつ)筋が弱ったり、切れたりして体重を支えられなくなるのが原因です。足の裏が痛むだけでなく、歩き方が不自然になって肩や腰、膝など全身に悪影響を及ぼします。初期の段階で発見できれば、装具や靴で治りますが、気付かずに発見されたときは悪化して手術が必要というケースも少なくありません。


 患者さん自身が病的な扁平足かどうか判断するのは難しいですが、歩くと異常に疲れたり、足裏の痛みが長引いたりするほか、タコやウオノメができやすいといった症状があるときは一度、整形外科を受診してください。


 足の親指が変形して曲がり、傷んだり腫れたりする外反母趾。足の形に合っていないハイヒールや、先のとがった靴を履き続けることが主な原因です。扁平足や、足の横幅が広い「開張足」も外反母趾の誘因となります。女性の患者さんが圧倒的に多いですが、男性や子どもにも発症します。悪化すると、出っ張った親指の根もとが靴に当たって痛みます。歩行や起立のたびに痛みを感じ、痛みをやわらげようとおかしな立ち方、歩き方をするようになり、全身をねじるために肩こりや腰痛を引き起こすことになります。

 

 治療は、軽度・中程度の場合は、靴の指導や足の筋肉を鍛える運動療法、足の指の間を広げる装具などを使う装具療法が基本です。重度になると手術となります。外反母趾ぐらいと軽く考える方が多いですが、歩くのが苦痛になれば生活の質は大きく下がります。中程度・重度であれば、治療を受けても痛みが消え、普通に歩けるまでには数カ月間かかります。痛みが出る前、軽度のうちに変形に気付き、対処することが何よりも大事です。


 足に痛みや違和感があっても我慢して、ぎりぎりまで悪くなってから病院に来られる方が多く、よくぞこの足で長年生活してこられた」と驚くこともあります。どうか体が(足が)発するSOSのサインを見逃さないでください。


・歩くと足が痛い

・歩きにくさを感じる

・歩くと異常に疲れる

・足がしびれている

・足に変形がある

・足が冷たい

・タコ、ウオノメがある

・外反母趾、開張足かもしれない


 繰り返しになりますが、足の健康は全身の健康に大きく影響します。

上記の症状に当てはまる方はもちろん、足にちょっと気になることがあったり、靴選びで迷ったりしたときは、信頼できる整形外科を受診して相談してください。


 
  • 2021年3月2日

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 整形外科で用いられる牽引療法とは、直達牽引法(骨を直接牽引する方法)と介達牽引法(皮膚を介して牽引する方法)の2種類があります。


 人間の脊椎(背骨)は頚椎(首の骨)から尾骨まで33個の骨が重なってできています。その中を脊髄が通り、さらにその脊髄から多数の末梢神経が、骨と骨の間を通ってできています。この骨は年齢や労働、ケガのために変形したり、骨と骨の間にある椎間板が飛び出したり(椎間板ヘルニア)してきます。この変形した骨や椎間板が脊髄や末梢神経に触れると、身体の一部に痛みや痺れ、麻痺などが起こってきます。頚椎や腰椎はこの変化が最も起こりやすい場所になります。


 今回は、当院のリハビリテーションで行っている介達牽引法である頚椎牽引療法と腰椎牽引療法のお話をしたいと思います。


 患者さんへ牽引装具を装着し電動牽引装置を用いて、1回10分首または腰をゆっくり牽引と休止を繰り返しながら行います。頚椎牽引は座位で行い、腰椎牽引は臥位で行っていきます。痛みはなく、専用の機具を使って軽く身体を伸ばすようなイメージになります。


〇 頚椎牽引

 頚部を自動で間欠牽引(一定の時間一定の力で、数秒単位の牽引と休止を交互に行なうこと)します。牽引を行うことで狭くなった骨の間隔を拡げ神経根や椎間板への圧力を軽減させ痛みを緩和させます。また、椎間板などの軟部組織の血行不良の改善や硬直した筋肉の緩和などの作用もあります。


【適応疾患】

 頚椎症・頚椎症性神経根症・頚椎椎間板ヘルニア・頚椎捻挫など


〇 腰椎牽引

 腰部を自動で間欠牽引(一定の時間一定の力で、数秒単位の牽引と休止を交互に行なうこと)します。背骨を伸ばすことにより椎間板や関節への負担が軽減され、背骨周辺のこわばった筋肉の緊張が和らぎ、筋肉や靭帯などの血流改善に効果があります。また、神経根や椎間板の炎症を沈静化させ疼痛、神経痛の緩和があげられます。腰の筋ストレッチや手技的なマッサージ的効果もあります。


【適応疾患】 

 腰椎椎間板ヘルニア・腰椎椎間板症・腰椎脊柱管狭窄症・坐骨神経痛・腰椎捻挫など



牽引療法の一般的治療効果として以下のものがあげられます。

① 椎間関節周囲軟部組織の伸張

② 椎間板、椎間関節の軽度の変形、変位の矯正

③ 椎間関節の離開

④ 椎間孔の拡大

⑤ 椎間板内圧の陰圧化と椎体前後靭帯の伸張による膨隆髄核の復位化

⑥ 攣縮筋の弛緩

⑦ マッサージ効果による循環改善・促進

⑧ 患部の安静・固定

(嶋田智明,高見正利,田口順子 他;物理療法マニュアル,医歯薬出版株式会社 引用)


牽引療法による症状の改善率の報告では 30 ~ 50 % 程度とありますが、患者様によっては、著名な改善を示す例もあるとされています。(Basmajian JV:Manipulation,Traction and Mas₋sage. Third edition,Williams & Wilkins,1985,pp172-173.)


【禁忌】

脊椎の感染症(骨髄炎・脊椎カリエス・強直性脊椎炎など)、悪性腫瘍、急性の激しい痛みが伴う場合、骨粗鬆症、骨軟化症、脊椎分離症、重篤な心臓疾患および肺疾患、すべり症、重篤な関節リウマチ、妊婦など


なお、牽引療法の開始には医師の診察・指示が必要となります。

首や腰の痛みがなかなかとれず牽引治療を試したいという方は、一度医師に相談してみてはいかがでしょうか。


 

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 前号で紹介させていただきましたが、「肩こり」の原因は多岐にわたる…ということです。厄介な肩こりですが、皆さまに気を付けて頂きたいのは、その肩こりがすぐにでも治療が必要な「危険な肩こり」か、否かの判断です。


 次のような症状があるときは、整形外科できちんと診察を受けることが大切です。


●手のしびれやまひを伴う…首や肩の神経・血管が圧迫されているときの症状です。

●首や肩を動かしていないのに痛む…骨の異常や内臓の病気が疑われます。

●徐々に症状がひどくなる…進行性の病気が考えられ、放置しているとさらに悪くなる可能性が高いです。

●運動をしたときに肩が痛む…狭心症など心臓の病気が疑われます。


 整形外科の診察では、まずは整形外科的な原因なのか、内科など他科の原因の可能性が高いのかを慎重に見極めます。そのためには、肩こりがいつから始まったのか、凝りや痛みの部位や強さ、感じ方や頻度、どのような場合に一番肩こりを自覚するか、姿勢により症状がどう変化するのかなど十分な問診を行います。

 次に、頚椎や肩関節などの動き(可動域)、押さえて痛いかどうか(圧痛点の有無)、運動機能や反射(神経診察)などを診て、そのうえでレントゲンやCT、MRIの画像検査、筋肉に分布する神経の状態を検査する節電図検査など行い、肩こりの原因を突き止めていきます。


 検査で頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症などの病気が見つかった場合は、もちろんそれを治療します。しかし、ここまでお話してきたように、肩こりの原因は多岐にわたり、また原因がはっきりしないケースも少なくありません。そのため一種類の治療法で簡単に治ることもありますが、原因や患者さんの状態に合わせて、複数の治療法を組み合わせていく場合も多いです。ここでは整形外科でよく行われる治療法のいくつかを紹介します。


① 物理療法

 「牽引機器」や「温熱機器」などによる物理療法です。さまざまな医療機器がありますが、筋肉内の血行を改善し疲労物質や発痛物質を取り除く作用や、筋肉を弛緩させる作用が期待され、一般的には継続治療することによってその効果が発揮されます。


② 薬物療法

 一番多く用いられるのは「筋弛緩剤」で、文字通り筋肉を緩める作用があります。筋弛緩剤で効果が見られないときは「消炎鎮痛剤」を使うこともあります。また、抗うつ剤、精神安定剤が効果をあげることもあります。「葛根湯」など漢方薬を処方する場合もあり、体を温め、筋肉の血行をよくすることで症状をやわらげる効果が見込めます。そのほか、神経の修復を助ける「ビタミンB製剤」や「血流改善薬」なども処方されます。


③ 注射療法

 凝りや痛みなどの症状が強い場合や、即効性を期待する場合、各種の「神経ブロック(肩甲上神経ブロック、頸部神経根ブロック、星状神経節ブロックなど)」や、筋肉の凝り固まった圧痛点に施行する「トリガーポイント注射」を行います。持続効果の高い「ボトックス療法」もあります。また、超音波検査機器を用いて頸部の筋肉の間の筋膜部分に、生理食塩水などを注射し、筋膜間の滑りをよくして症状を改善する「筋膜リリース」という治療法も注目されています。


④ 装具療法

 腰痛や膝痛にはコルセットやサポーターが有効なことがあるように、首や肩の凝り・痛みにも装具が効果を発揮する場合もあります。首が動かないようカラーと呼ばれる円筒状の装具を巻くことで痛みを軽減したり、また、ランドセルを背負うように背中に装着し、肩甲骨を持ち上げ首の筋肉を緩め、背筋が伸びた良好な姿勢の維持に役立つ装具もあります。


⑤ 運動療法

 医師と理学療法士が、患者さん一人ひとりの肩の状態、肩こりの原因に合わせて、毎日の習慣として取り入れたい肩周囲に対するリラックス・ストレッチ法、筋トレなどを指導します。肩こりの解消だけでなく、徐々に筋肉が付いて、凝りにくい肩に変わっていきます。


 現代病の典型ともいえる肩こり。慢性化している方も多く「肩こりがない状態が分からない」という声もよく聞きます。なかなか凝りが取れないので、マッサージや鍼灸に通って対処している人も多いと思います。誰かに身体をケアしてもらえば、その時はラクになるかもしれませんが、問題の原因を解決しないことには、また同じ状態が繰り返されてしまいます。


 「たかが肩こり」と我慢したり、「年のせい」「どうせ治らない」あきらめたりせず、整形外科を受診し、一度、自分の首や肩がどのような状態なのか確かめてみてください。治療によって、それまで四六時中、悩みの種であった肩こりから解放されると、患者さんの生活の質は大きく向上します。「肩こりのない状態」をもう一度取り戻してほしいと願っています。


 2月のブログは、連載にしてみました。最後まで読んでいただきまして有難うございました。次回は、物理療法について少し詳しく解説したいと思います。



 
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