top of page

Blog.

ブログ

検索

ree

 

 突然、「風が吹いても痛い」ほどの激痛が足の親指の付け根などを襲う『痛風』。

患者数は増加を続けており、国内で約100万人と推定されていますが、新型コロナウイルスの感染拡大で、これまで以上に痛風、そして、痛風につながる「高尿酸血症」に注目が集まっています。


 在宅勤務や外出自粛で運動不足になったり、食生活が乱れたりしたことなどが原因となり、コロナ前後を比べると痛風、高尿酸血症の患者さんが約2〜3割増加傾向にあるとの調査結果が報告されています。痛風の発症は季節の変わり目の春やアルコール摂取が増える夏に多くみられましたが、コロナ禍で秋以降も注意が必要になりそうです。

 病名としてよく耳にする痛風ですが、実際にどのような病気なのか、一般にはあまり知られていません。予防や治療法には<誤解>も多いです。確かな知識で発症を抑え、<正しく対策する>心構えが大切です。


 血液中の尿酸が正常範囲を超えて多くなった状態を高尿酸血症といいます。尿酸は体内で溶けにくい性質があり、針状の結晶が手足の関節にたまります。何らかの刺激が加わって結晶がはがれ落ち、異物と認識した白血球が攻撃しようと集まって起こる炎症・発作が痛風です。ただ、痛風が起きる仕組みは未解決の部分が多いのが現状です。尿酸値(血液100ミリグラム中の尿酸の量)が7.0ミリグラムを超えると高尿酸血症と診断され、痛風の予備軍となります。数は国内で1千万人に迫っています。

 尿酸の素となるのは「プリン体」という物質です。主に体内で生成され、食べ物やお酒の中にも含まれています。尿酸はプリン体のいわば老廃物で、普通の人は体内で1日約0.6ミリグラムつくられます。しかし、尿酸がつくられ過ぎたり、排せつされにくくなったりし、体内のバランスが崩れ、プリン体の処理がうまくいかなくなると高尿酸血症を引き起こします。ほとんどの動物は尿酸が分解され、体の中にたまりませんが、人は分解酵素が遺伝的に欠けており、たまりやすい性質があります。バランスが崩れる原因には、体質やストレス、食生活などの要因が関係していると考えられています。

 痛風の発作は、関節の痛みや腫れ、赤み、熱感が典型的な症状です。尿酸は体温が低くなるほど結晶化しやすいため、明け方に起こりやすくなります。特にお酒をたくさん飲んだ翌朝は注意が必要です。約75%は母趾(ぼし)MTP関節と呼ばれる足の親指の付け根の腫れですが、膝や肘関節、かかと、手の関節に現れる場合もあります。万力で締め付けられるような激痛が走り、立って歩けなくなるほど。「酔っ払って、覚えがないのだけど、足をどこかにぶつけて骨が折れてしまったのかもしれない」と骨折を疑って受診される患者さんも多いです。痛風の患者さんは遺伝子やホルモンの関係で男性が98.5%を占めます。女性でかかる人は閉経後がほとんどです。

 痛風が厄介なのは、<激しい痛み>だけではありません。恐ろしい病気、命にかかわる病気を呼び込んだり、引き起こしたりする要因にもなります。


 痛風=尿酸の関係のみに着目されがちですが、高尿酸血症は、「高血圧」や「腎不全」といった動脈硬化性疾患に関連する可能性の高いことが明らかとなってきています。また、高尿酸血症の患者は、腎臓で結晶化し、石が尿道をふさぐ「尿路結石」の合併率が高いことも特徴です。さらに血清尿酸値の高い状態が続くと、動脈硬化や腎臓に尿酸塩結晶が沈着するなどし、「痛風腎」と呼ばれ徐々に腎機能が低下します。そのまま放置すると、場合によっては人工透析や腎移植が必要になることもあります。人工透析導入患者のうち、1%弱はこの痛風腎によるものとされています。自覚症状がなくても油断は禁物です。


 治療ですが、発作時の応急処置として、患部を心臓より高い位置に保ち、タオルを巻いた氷のうや冷水で冷やすと痛みが軽減されます。湿布はあまり効果がなく、温めたりマッサージをしたりすると悪化します。何より早めの受診が大切で、消炎鎮痛剤を処方して痛みと炎症を抑えます。市販のアスピリンが含まれた痛み止めは発作を悪化させることがあるので服用は避けてください。


 本格的(根本的)な治療が必要になるのは、尿酸値が7.0ミリグラムを超えている場合です。定期的に数値を測定し、食事や運動など生活習慣の改善が必要となります。8.0ミリグラム以上の場合、症状の有無にかかわらず、医療機関による治療が不可欠です。最終的に尿酸値を6.0ミリグラム以下にするのが目標となります。痛風は、残念ながら完治する病ではありませんが、適切な治療と自己管理で十分コントロールできます。


 薬物による治療は昨今、目覚しく進歩しています。1日1回の服用で効果が得られる薬、腎機能が低下した患者さんへの副作用が少ない薬、尿たんぱくや高血圧の改善効果も見込める薬なども登場し、患者さんの体質や症状ごとにきめ細かく対応できるようになっています。


 注意したいのは、服薬の中断です。薬の飲み忘れによって血清尿酸値が変動することが痛風発作の誘因となりますので、たとえ無症状でも継続した内服が重要になります。また、正常とされる血清尿酸値を5年間維持していた患者さんでも、服薬を中止すると約40%の確率で3年以内に炎症(発作)が再発するというデータがあります。なかなか大変なことですが、服薬は基本的には生涯続けていく必要があります(尿酸値が安定している場合は医師と相談し、いったん中断するケースもあります)。


 薬物治療の質はよくなっていますが、食事や運動療法といった生活習慣の改善が基本であるということに変わりはありません。痛風の患者さんの約60%は肥満で、痛風の予防はメタボリックシンドローム対策と直結します。カロリー摂取量に気を付け、標準体重を保つことが大切です。プリン体は体内で分解されると尿酸に変わることから、プリン体を多く含む食品の取り過ぎも注意が必要です。肉や臓物、魚介類の干物などに多く含まれています。糖分の多いソフトドリンクもよくありません。お酒は、種類に関わらずアルコール自体が血清尿酸値を上げるため節酒を心がけ、醸造酒よりは蒸留酒を、ビールを飲むならプリン体0のものを選ぶと良いと思います。患者さんの中には、プリン体0のお酒であれば、たくさんの量を飲んでも大丈夫と考える人も多いですが、それは誤解です。重ねて言いますが、アルコールを大量に飲めば、痛風の危険性を高めることに変わりはありません。お酒は控えめにして、最低でも週2日の休肝日を設けることをお勧めします。


 尿酸は、中性~アルカリ性の尿に溶けやすい性質があります。尿が酸性の人は、野菜や海藻などのアルカリ性食品を食べるようにしましょう。低脂肪の乳製品や植物性タンパク質(大豆など)は、継続的に取ると痛風の発作予防につながるので、意識してバランスよく摂取してください。激しい運動は尿酸値を上げるので、水泳やウオーキングなどの有酸素運動を継続し、1日2リットル以上の水分を取るようにしましょう。

 痛風や高尿酸血症は、整形外科以外にも内科、リウマチ科などの診療科でも診断・治療を行っていますが、関節の痛みや腫れは、痛風以外の病気も十分に考えられます。ほかの病気との鑑別、痛風ではなかった場合の治療のことなどを、まずは整形外科を受診するのが効率的です。

 最後に、多くの痛風、高尿酸血症の背景には生活習慣のゆがみがあります。食事療法や運動療法は痛風、高尿酸血症の改善や予防だけでなく、健康増進にもつながるので、毎日実践してもらいたいです。

 

ree

 ここ数日、札幌にも新型コロナウイルスの第3波襲来か…とメディアで取り上げられており、いまだに収束の兆しが見えません。


 コロナの流行期である秋冬を迎えるにあたり、当院として更なる感染拡大予防が必要と考え、このたび、待合室での『密』対策として、フードコート等でおなじみの呼び出しシステム(呼び丸君:18台)を導入致しました。


 当院駐車場敷地内は呼び出し可能範囲になっておりますので、待合室混雑時・お子様連れやご高齢の方・2次感染が不安な方は、受付に申し出て頂ければレシーバーをお渡し致します。


 順番が来るまで、ご自身のお車で待機することが可能になりましたので、希望される方は受付までどうぞお声かけ下さい。

 

 

 

ree

『肉離れ』は中高生から高齢者まで幅広くみられる整形外科疾患です。特にスポーツ動作に伴って下肢(太ももやふくらはぎなど)に起こることが多く、選手が「急に筋肉が切れたように感じる」という経験に基づく呼び名です。受傷時の状況について選手は、「“ブチッ”“バチッ”という音がしたような突然の衝撃を感じた」、「鋭い、力が抜けるような痛み」などと表現します。

 肉離れは皆さんも子どもの頃からよく耳にしてきた病名の一つではないでしょうか。ご自身で肉離れを経験された方も多いと思います。スポーツ中、急にダッシュやジャンプをした時や、机など重いものを不自然な姿勢で動かそうとした時に発症することが多く、外来でも患者さん自身が「多分、肉離れだと思う」と受診されるケースが目立ちます。


 たしかに肉離れは頻度の高いスポーツ外傷・障害の一つですが、その病態はまだ不明な点が多く、じつは整形外科医でも的確な診断や治療が難しい病気なのです。


 肉離れは、典型的には筋肉が収縮した状態で引き伸ばされた時に生じます。自分の筋力によって筋繊維や筋膜の一部が切れることで起こるけがです。近年の研究から、筋肉自体の断裂というよりは、多くの場合、筋肉から腱に移行する部分に損傷が起こることが分かっています。発症には、筋肉のコンディションが大きく影響します。筋肉が硬いと、引っ張られた力に対して筋肉が縮もうとする力が強い状態にあるため、この時に筋肉自らの筋収縮力、あるいは筋肉が反対方向へ伸ばされることにより発症します。

 症状は、損傷部に痛みや腫れが生じ、固まり(しこり)になった筋肉や断裂部のくぼみに触れることができます。損傷した部位の筋肉を伸ばそうとすると痛みが強くなります。重症になると、広い範囲の皮下出血(内出血)が生じることもあります。


 『肉離れ』の診断・症状の程度をみるのには、レントゲン検査ではなくMRI検査が有用です。 MRI検査の結果、肉離れの軽症では、筋肉内・あるいは筋肉と筋肉の間の出血が認められます。中等症では、腱に部分的な損傷が確認できます。重症になると、腱が完全断裂したり、腱が骨から剥がれたりします。

 治療は、受傷直後では安静、氷やアイスパックなどによる冷却、包帯による圧迫、および四肢では患部を高くすることを徹底し、血腫の形成や炎症を最小限に抑えます。痛みを軽減するために、内服薬や塗り薬、湿布なども使います。


 その後、軽症例では、ストレッチや関節を動かすリハビリを開始します。痛みがなくなった時点でジョギングなどを開始し、以後段階的に運動レベルを上げていきます。スポーツ選手であれば、受傷後1〜2週間での競技復帰を目指します。

 中等症の場合は、患部が伸ばされる感覚が出てきてからストレッチやリハビリをスタートします。中等症になると肉離れの再発率が高まるので、負荷の強い動作はMRI検査で腱の修復が確認されてからの開始となります。復帰には4〜6週間を要します。

 重症例では、ギプスや松葉杖が必要だったり、痛みが長引いたりすることもあり、スポーツ選手の場合には競技レベルの低下を防ぐための手術が考慮される場合もあります。復帰には4〜6カ月を要します。

 近年、『肉離れ』に対する新たな治療法として、再生医療の一つで、ご自身の血液に含まれる血小板を患部に注射する「PRP療法」や、高圧の環境で高濃度の酸素を吸入することで患部の組織修復を促す「高気圧酸素療法」が登場し、一部の医療機関で実施(自由診療)されていますが、まだ十分なデータが出ていないため、治療効果についてはっきりとした見解はありません。

 『肉離れ』の発症には、筋肉のコンディションが大きく影響すると前述しましたが、原因の大部分は「筋肉の柔軟性の不足」と考えられています。


 肉離れの症状が落ち着いても、筋肉の柔軟性が不十分な状態のまま日常生活や競技に復帰すると、再発する可能性が高くなります。発症や再発の予防には、①筋肉の柔軟性の保持・改善 ②筋力・筋肉の強化 ③不良な姿勢(運動姿勢)の矯正 ④ストレッチ、柔軟体操の習慣化、などが重要になります。適切な治療が大切なのはいうまでもないことですが、治療以上に理学療法士などの指導のもと、計画的なリハビリや運動療法、ストレッチや柔軟体操などの指導を受けることが予防のカギとなります。

 また、『肉離れ』と似たような症状が出る筋肉のけがにはいろいろな種類(筋挫傷、こむら返り、筋・腱断裂など)があり、適切な治療のためにはそれらとの鑑別が大切になってきます。肉離れそのものが腰痛や背部痛の原因になっているケースも少なくありません。この場合、『筋・筋膜性疼痛』と呼びます。代表的なものは、重いものを持ったり体をねじったりした時に生じるもので、特定の姿勢で特定の筋肉に負荷が加わって引き起こされます。


 とても身近なけがである『肉離れ』ですが、正しい診断による適切な治療を行わないと、症状が改善しないことはもちろん、別のけがや痛みなどの不調を招いてしまう危険性もあるので注意が必要です。



 
bottom of page