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『肉離れ』は中高生から高齢者まで幅広くみられる整形外科疾患です。特にスポーツ動作に伴って下肢(太ももやふくらはぎなど)に起こることが多く、選手が「急に筋肉が切れたように感じる」という経験に基づく呼び名です。受傷時の状況について選手は、「“ブチッ”“バチッ”という音がしたような突然の衝撃を感じた」、「鋭い、力が抜けるような痛み」などと表現します。

 肉離れは皆さんも子どもの頃からよく耳にしてきた病名の一つではないでしょうか。ご自身で肉離れを経験された方も多いと思います。スポーツ中、急にダッシュやジャンプをした時や、机など重いものを不自然な姿勢で動かそうとした時に発症することが多く、外来でも患者さん自身が「多分、肉離れだと思う」と受診されるケースが目立ちます。


 たしかに肉離れは頻度の高いスポーツ外傷・障害の一つですが、その病態はまだ不明な点が多く、じつは整形外科医でも的確な診断や治療が難しい病気なのです。


 肉離れは、典型的には筋肉が収縮した状態で引き伸ばされた時に生じます。自分の筋力によって筋繊維や筋膜の一部が切れることで起こるけがです。近年の研究から、筋肉自体の断裂というよりは、多くの場合、筋肉から腱に移行する部分に損傷が起こることが分かっています。発症には、筋肉のコンディションが大きく影響します。筋肉が硬いと、引っ張られた力に対して筋肉が縮もうとする力が強い状態にあるため、この時に筋肉自らの筋収縮力、あるいは筋肉が反対方向へ伸ばされることにより発症します。

 症状は、損傷部に痛みや腫れが生じ、固まり(しこり)になった筋肉や断裂部のくぼみに触れることができます。損傷した部位の筋肉を伸ばそうとすると痛みが強くなります。重症になると、広い範囲の皮下出血(内出血)が生じることもあります。


 『肉離れ』の診断・症状の程度をみるのには、レントゲン検査ではなくMRI検査が有用です。 MRI検査の結果、肉離れの軽症では、筋肉内・あるいは筋肉と筋肉の間の出血が認められます。中等症では、腱に部分的な損傷が確認できます。重症になると、腱が完全断裂したり、腱が骨から剥がれたりします。

 治療は、受傷直後では安静、氷やアイスパックなどによる冷却、包帯による圧迫、および四肢では患部を高くすることを徹底し、血腫の形成や炎症を最小限に抑えます。痛みを軽減するために、内服薬や塗り薬、湿布なども使います。


 その後、軽症例では、ストレッチや関節を動かすリハビリを開始します。痛みがなくなった時点でジョギングなどを開始し、以後段階的に運動レベルを上げていきます。スポーツ選手であれば、受傷後1〜2週間での競技復帰を目指します。

 中等症の場合は、患部が伸ばされる感覚が出てきてからストレッチやリハビリをスタートします。中等症になると肉離れの再発率が高まるので、負荷の強い動作はMRI検査で腱の修復が確認されてからの開始となります。復帰には4〜6週間を要します。

 重症例では、ギプスや松葉杖が必要だったり、痛みが長引いたりすることもあり、スポーツ選手の場合には競技レベルの低下を防ぐための手術が考慮される場合もあります。復帰には4〜6カ月を要します。

 近年、『肉離れ』に対する新たな治療法として、再生医療の一つで、ご自身の血液に含まれる血小板を患部に注射する「PRP療法」や、高圧の環境で高濃度の酸素を吸入することで患部の組織修復を促す「高気圧酸素療法」が登場し、一部の医療機関で実施(自由診療)されていますが、まだ十分なデータが出ていないため、治療効果についてはっきりとした見解はありません。

 『肉離れ』の発症には、筋肉のコンディションが大きく影響すると前述しましたが、原因の大部分は「筋肉の柔軟性の不足」と考えられています。


 肉離れの症状が落ち着いても、筋肉の柔軟性が不十分な状態のまま日常生活や競技に復帰すると、再発する可能性が高くなります。発症や再発の予防には、①筋肉の柔軟性の保持・改善 ②筋力・筋肉の強化 ③不良な姿勢(運動姿勢)の矯正 ④ストレッチ、柔軟体操の習慣化、などが重要になります。適切な治療が大切なのはいうまでもないことですが、治療以上に理学療法士などの指導のもと、計画的なリハビリや運動療法、ストレッチや柔軟体操などの指導を受けることが予防のカギとなります。

 また、『肉離れ』と似たような症状が出る筋肉のけがにはいろいろな種類(筋挫傷、こむら返り、筋・腱断裂など)があり、適切な治療のためにはそれらとの鑑別が大切になってきます。肉離れそのものが腰痛や背部痛の原因になっているケースも少なくありません。この場合、『筋・筋膜性疼痛』と呼びます。代表的なものは、重いものを持ったり体をねじったりした時に生じるもので、特定の姿勢で特定の筋肉に負荷が加わって引き起こされます。


 とても身近なけがである『肉離れ』ですが、正しい診断による適切な治療を行わないと、症状が改善しないことはもちろん、別のけがや痛みなどの不調を招いてしまう危険性もあるので注意が必要です。



 

  当院には Canon (旧東芝)社製の X 線発生装置と、富士フィルム社製のデジタル X 線検出システムを導入しており、従来のフィルムよりも見やすく診断能の高い画像が得られます。また、システムの感度が高いため被曝 X 線量を低減することが可能になっています。


 しかしながら、整形外科においてレントゲン検査は重要な役割を果たしており、患者の皆様にも何度も撮影させて頂いているため被曝が心配な方も少なくないでしょう。

「何回もレントゲン撮ってがんにならないの?」

「子供はレントゲン撮って大丈夫なの?」

「妊婦はレントゲン撮って大丈夫なの?」

 今回は検査前に患者様からよく聞かれるこれらの質問に回答致します。皆様の被曝についての理解の一助になれば幸いです。

Q1.何回もレントゲン撮ってがんにならないの?

A1.レントゲンが原因となってがんが発生することはまずありません。

被曝には、確定的影響と確率的影響があります。前者は一定の線量以上を受けると現れる影響であり、代表的なものとしては白内障や脱毛などが挙げられます。後者は確定的影響のようなしきい値はないですが、100mSv 以上の線量を受けると有意に起こりやすい影響とされており、がんはこれに含まれます。何れの影響もレントゲンの被曝線量ではあり得ない影響とされています。

Q2.子供はレントゲン撮って大丈夫?

A2.子供の放射線の感受性は成人と比べて数倍高いですが、レントゲンの線量では問題ありません。当院では子供のレントゲン撮影時は可能な限り被曝線量を下げて撮影しているためご安心ください。

Q3.妊婦はレントゲン撮って大丈夫?


A3.妊娠時のレントゲンは推奨されるものではありません。緊急時に必要最低限の撮影は可能ですが、妊婦の方は検査前に申告をお願いします。胎児への被ばく線量は 100mGy 以下であれば問題ないとされていますが、確定的影響の閾値としては最も低いものであり、奇形などのリスクもあるため被曝線量は必要最低限にするべきと考えています。

そのため、当院で撮影する際は被曝線量を可能な限り小さくして行っています。

 以上が、レントゲン室内でよくある Q&A になります。


2011 年に福島原発事故が発生したことなどもあり、放射線に対して恐いイメージがあ

る方も多いと思いますが、医療におけるレントゲンの被曝線量は人体にほぼ影響がない

ことをご理解いただければ幸いです。







 

  仕事、家事、趣味…。手や指は普段あまり意識することなく、日常的に酷使されています。40〜60 歳代を中心とした女性に多いのが、手や指が「痛む」「腫れる」「しびれる」などの症状です。当院にもそのような手指の不調を訴え、多くの患者さんが受診されています。ペットボトルのふたが開けられない、雑巾がしぼれないなど日常生活に不便さを感じて来られる方も少なくありません。

 手指は、骨や筋肉、腱、腱鞘(腱の通り道)、神経、血管などが複雑に入り組んだ構造になっており、人間の体の中で最も綿密で鋭敏な感覚を持つとされています。手指の病気はさまざまですが、頻度が高いのは腱や腱鞘に炎症が起こり、痛みが生じる「腱鞘炎(ばね指、ドゥケルバン病)」、関節内の軟骨がすり減り、痛みや腫れが生じる「変形性指関節症(ヘバーデン結節、ブシャール結節、母指CM関節症)」、人差し指から中指を中心に痛みやしびれが出る「手根管症候群」、手指のほか全身の関節に慢性的な炎症が起こる「関節リウマチ」などが代表的なものです。

 手指の病気は 40 歳以上の女性に多いことが知られています。これまでは加齢や手指の使い過ぎが主な要因と考えられてきましたが、近年の研究で女性ホルモンの減少が関わっていることが明らかになってきました。


 女性のからだは、40〜50 歳ごろを境に女性ホルモンの一つ、エストロゲンの分泌量が急激に減少することが分かっています。冷えや肩こり、不眠、発汗、のぼせ、ほてりなど、いわゆる「女性の更年期障害」というのは、閉経を迎える前にこのエストロゲンが激減することで起こる症状で、手指の不調を起こしやすくなるのも、更年期の症状の一種であると考えられています。

 前置きがだいぶ長くなりましたが、ここからが本題です。


「テレビや新聞、雑誌で医師や大学教授が紹介していたサプリは、手指の不調や病気に本当に効くのですか?」「口コミサイトで人気の高い手指の健康を保つサプリは、効果も高いのですか?」


 これは私が外来診療で患者さんから相談を受けたことがある質問の一部です。質問の中に出てくるサプリは、女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをするとされる成分「エクオール」を配合したものです。エストロゲンの減少に起因する手指の痛みやしびれなどの不調のほか、さまざまな更年期症状の改善や予防の効果を謳い、誰もが知っているような大手の製薬会社や食品会社をはじめ、たくさんのメーカーからエクオールを配合したサプリが販売され、近年大きな注目を集めています。皆さんの中にもすでに愛用されている方がいらっしゃるかもしれません。

 まず、エクオールという成分について、科学的根拠(エビデンス)が明確な情報をここにまとめてみます。


 エクオールは大豆イソフラボンの一種であるダイゼインが腸内で代謝される時に産生される物質です。エストロゲンとよく似た働きをするという特徴があるため、エストロゲンが減少することで生じるさまざまな症状の緩和に効果が期待され、さまざまな研究が進められています。


 人の腸内には約 1 千種類の細菌が存在し、ビフィズス菌や乳酸産生菌などの善玉菌とウェルシュ菌や大腸菌などの悪玉菌に分類されます。大豆が食事として摂取されると、ダイゼインが乳酸菌の仲間のエクオール産生菌の作用によってエクオールに変換します。面白いことに、このエクオール産生菌が腸内に存在していても、エクオールを作れる人と作れない人がいます。日本人の女性の 2 人に 1 人はエクオールを産生できない体質だと考えられています。腸内細菌によって産生されたエクオールは腸管から吸収され、全身に運ばれます。エクオールの一部は尿中に排せつされるので尿中のエクオールを調べることで、自分がエクオールを作り出せる体質かどうかをチェックできます。尿中のエクオール測定キットは誰でも入手できます。

 このような事実から各メーカーは、特にエクオールを産生できない体質に女性に向け、テレビや新聞、雑誌、インターネットでエクオール配合のサプリの継続的な摂取を勧め、手指の機能改善や、そのほかの更年期症状の予防・改善への有効性を大々的に宣伝していますが、それらのサプリは本当に効果があるのでしょうか?

 あれ? どこかで聞いたことがあるようなお話ですね、、、そうです、グルコサミン、コンドロイチン、(飲む)ヒアルロン酸などのサプリ・健康食品について取り上げたコラムを思い出してみてください。

 「テレビや新聞、雑誌で医師や大学教授が紹介していたサプリは、手指の不調や病気に本当に効くのですか?」「口コミサイトで人気の高い手指の健康を保つサプリは、効果も高いのですか?」。


 先の質問の繰り返しですが、整形外科医の立場から結論を申し上げると、基本的にほとんどのエクオールのサプリは「効果がない」または「まだ効果がはっきりと明らかになっていない」と考えた方がいいでしょう。現時点で、整形外科医としてエクオールのサプリをお勧めすることは絶対にありません。患者さんが「どうしても」というのであれば「あくまで自己責任で」とお伝えするほかないです。それぞれの手指の疾患に対し、明確な科学的根拠のある治療法が揃っていますから、非常に残念な気持ちにならざるを得ません。

 今回も「効果がない」と聞いて驚かれた方も多いと思います。いや「私には効いている」と反論される方もいらっしゃると思います。しかしながら、現時点ではエクオールのサプリが手指の不調や更年期症状の予防・改善に有効だという科学的根拠は示されていません。つまり、専門家による実験や調査などの研究結果から導かれた「裏付け」がないということです。分かりやすくいえば、確実に効き目があると認められていないということです。


 本当にその症状に効くというデータが実証されれば、「医薬品」として承認されるはずです。しかし、エクオール のサプリに、現在のところそういった話はまったく耳にしません。

 ところで、テレビや新聞の体験談やインターネットの口コミはすべて「嘘」なのでしょうか?これは一概に嘘とは言い切れません。グルコサミン、コンドロイチン、(飲む)ヒアルロン酸のコラムでも書きましたが、効くと信じて飲むことで「プラシーボ効果=思い込みによる偽薬効果」により、体調がよくなったと感じた人がいらっしゃったかもしれません。しかし、それはあくまで気持ちの問題であって、医学的に効果があったことを証明することにはなりません。


 また、人は過去の記憶を正確に覚えてはいません。時として、自分に都合のいいことだけを覚えていて、本当の記憶をすり替えてしまうこともあります。例えば、症状の改善とサプリの服用のタイミングは本当に一致していたのでしょうか? サプリ以外にも安静にした、別の薬を使っていた、など重要な事実を忘れていたり、誤って覚えてしまっていたりする可能性もあるでしょう。個人の感想のみで、そのサプリを飲んだから治った、だから効いたと証明するのは非常に難しいことです。もしサプリを飲まなくても症状は改善したかもしれないからです。

 「有名な医師や大学教授のお墨付きがあるけれど、あれは一体、、、」という方もいらっしゃるでしょう。白衣を着た権威とされている人が「手指の痛みはエクオールで解消!」と言っていれば、誰でも信じてしまいますよね。


 これも、その方々は「嘘」を言っているわけではありません。医療従事者とはいえ全員が同じ考えを持っているわけではないですし、また、各メーカーにとって都合のいい情報だけが表に出てきて、都合の悪い情報は隠されているような編集がなされていることがほとんどで、登場する各先生が番組や紙面で語っていることは「成分についての科学的根拠」であったり「効果が期待できる」「有効性が見込める」というように語尾を濁したりあいまいな表現にしたりし、嘘や間違ったことを伝えないよう細心の注意が払われているように思います。


 ただ、個人的な感想ですが、医療に関する情報としては大きく偏りが生じているように見えます。各メーカーとも法律の隙間をぬって誇大広告を続けているかのようで、あまりいい気持ちはしません。

 2019 年 11 月 23 日の毎日新聞の記事に、特定の栄養素を凝縮して錠剤やカプセルにした市販のサプリメント 100 製品を国民生活センターが商品テストしたところ、4 割以上が医薬品で定められた規定時間内に水に溶けなかった、とあります。飲んでも体内で吸収されていない恐れがあり、同センターは「必ずしも医薬品と同様の品質が保たれているとは限らない」と注意喚起しました。サプリや健康食品やは形を見れば薬と変わりませんが、影響摂取や健康増進のためのもので、病気の治療が目的である薬の代わりになるわけではありません。サプリや健康食品だけで病気が治ったということを証明した研究結果はありません。

 

 もちろん、すべてのサプリが「悪い」わけではありませんが、サプリさえ飲んでいれば健康になると安易に考える大きな間違いです。メーカーの宣伝文句に踊らされ、医療や生活習慣を見直す努力を後回しにしないでほしいと心から願っています。

 最後に、手指の痛み、不調を放置していると、症状が悪化し日常の動作が制限されるなど、快適な生活を阻む原因にもなりかねません。変形性指関節症であれば、40 歳代後半〜50 歳代前半で痛みや腫れが生じ、その後に適切な治療を受けられないでいると、60 歳代になり変形が起こるケースが多いです。一度変形してしまった関節は元には戻りません。

手指の病気に対する治療法には、主に ① 安静・固定(手指の不使用、テーピング固定等) ② 薬物療法(鎮痛剤、ステロイド注射、ビタミン剤等) ③ 手術(切開、関節固定、人工関節等)などがあります。多くの病気と同様に、発症から適切な治療を開始するまでの期間が短いほど治療効果が高くなり、治療中・後の生活の質が良好に保たれることが分かっています。痛みがなくても、何か違和感を感じた時にはすぐに整形外科を受診し、自分の手指の状態を把握しておくことも、健康な手指を維持し、一生快適に手指の機能を使い続けるコツといえます。


 これまで手指の使いすぎや年齢のせいだとあきらめて、痛みを我慢されていた人も多いかと思います。まずはかかりつけ整形外科で、手指の状態や疾患の有無を調べ、セルフケアの方法や治療について専門医と相談してみてください。






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