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 肘の病気やケガは、年齢や性別に関わらず起こりえる疾患です。


今回は、当院で受診頻度の高い症例について解説させていただきます。


・テニス肘(上腕骨外側上顆炎)

 肘の外くるぶしあたりが痛くなり、物を持ち上げたり書字やキーボード、マウスを

 使う仕事、タオルを絞るたびに痛みを覚えるようになります。


 治療は薬物治療、ストレッチ、マッサージ等があります。

 早期には注射も有効です。


・野球肘

 ボールを投げる動作によって肘が痛くなる肘の障害の総称です。

 野球肘は、野球やソフトボール、やり投げなどの物を投げる動作だけでなく、

 テニスのようなラケットを振る動作で肘に強い力がかかるスポーツでもなります。

 骨(骨端線)、軟骨、靭帯、筋肉に負担がかかって発症します。

 肘の外側、内側、後方の3つの部位別に大きく分けられます。

 肘の外側の障害は、痛みが出て、軟骨がはがれるまでに1~2年以上かかることから

 本人も周囲も気づかないことがあります。


 軟骨がはがれてしまうと手術が必要になります。

 肘の内側の障害は、靭帯の骨についているところがくり返し引っぱられて、

 骨と軟骨が傷つきます。野球肘のなかでもっとも多く、通常は2~4週間の

 投球中止で復帰できます。


 肘の後方の障害は肘の肘頭という部分の障害で、小学生には少なく、

 高校生以上でおこることが多い障害です。

 それぞれ状況に応じて、治療や復帰までの期間は異なってきます。


・ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)

 手首や肘を使いすぎることによって起こります。

 肘の内側にある内側上顆に過度な負担がかかり、炎症を起こして痛みが生じます。

 手首を曲げたり、ひねったりする時に肘や前腕の内側に痛みを感じるのが特徴です。

 ゴルフで無理なスイングをしすぎた場合に発生することから、

 『ゴルフ肘』とも呼ばれます。


 治療は、内服薬や湿布で炎症を抑えて、痛みの改善を図ります。

 痛みが強い場合は、ステロイド注射をすることがあります。

 肘への負担を減らすのにストレッチをしてみるのもよいでしょう。


・肘部管症候群

 手首から先の小指、薬指のあたりにしびれが出ます。

 進行すると、手の甲の筋肉がやせてきたり、小指と薬指が変形します。

 加齢に伴う肘の関節の変形や神経を固定している靭帯やガングリオンなどの

 腫瘤による圧迫が原因です。


 治療は薬物治療、肘の安静などの保存治療を行います。

 改善しない場合や、麻痺が進行している場合は手術をします。


・肘内障

 子供が手を引っ張られた後などに、痛がって腕を下げたままで

 動かさなくなります。

 肘の外側の骨(橈骨頭)の靭帯がずれることで起こります。

 治療は徒手整復をします。くり返すこともあるので注意してください。


・滑液包炎

 滑液包とは、関節の周りにある袋で、関節の動きを滑らかにする役割があります。

 度重なる圧迫や過剰な摩擦、打撲や捻挫などの外傷によって外傷性炎症を

 おこして腫れることが多いですが、痛風、リウマチなど炎症性によるものもあります。


 肘の後ろ側の骨の上にみられるのが肘頭滑液包炎です。

 局所に熱感を伴ったり、発熱することがあります。

 良性のもので、大きい場合や違和感があれば針を刺して水を抜きます。

 圧迫することも効果はありますが、再発することが多いです。

 炎症が原因の場合、抗菌薬による治療をします。

 予防する最善の方法は、できるだけ肘を酷使しないことです。

 肘を使う運動や仕事の後は、回復するための時間を設けるとよいでしょう。


もし、肘に痛みや違和感があれば放置せず、整形外科を受診することをおすすめします。




 

 ある日、肩に眠れないほどの激痛が走り、腕が上がらなくなる──。

 

 肩が痛む病気には、以前コラムでも取り上げた「四十肩・五十肩」や「腱板断裂」以外にもうひとつ、40〜50代の女性に多い「石灰沈着性腱板炎」があります。

 

 石灰沈着性腱板炎の痛みは激烈で、黙っていてもズキズキと痛み、手がまったく上がらなくなることもしばしばあります。


 肩の関節あたりの小さな筋肉の集まりを「腱板」といいます。ここに石灰(リン酸カルシウム)が沈着し、それが原因で炎症が起き、肩が痛くなったり関節が動かせなくなったりする病気が、石灰沈着性腱板炎です。


 大きく分けると、急に激痛が起きる<急性型>と、なんとなく肩が痛い状態が続く<慢性型>があります。

 

 急性型では、突然、前触れもなく肩に耐え難い激痛が生じます。腱板内に沈着した石灰を免疫細胞が異物と判断し、排除しようと大量の化学物質を発生させて炎症を起こすためです。

 

 一方、慢性型では、石灰沈着部が盛り上がり、腕の上げ下げの時に肩甲骨の骨や靭帯に引っかかるような痛みを生じ、軽度の炎症により鈍い痛みが持続します。


 急性型と慢性型の中間で、慢性的な鈍痛の合間に軽度の発作性の疼痛を生じる

<亜急性型>もあります。


 この石灰は、当初は濃厚な液体状ですが、時間が経つにつれて硬くなっていきます。石灰がたまって膨らんでくると痛みが増しますが、なぜ腱板に沈着するかは、はっきりと分かっていません。一説では、肩を使うことで腱板に傷がつき、修復する過程で腱板に石灰が付着するのではないかと考えられています。骨密度とは関係ありません。


 中年以降の人にみられる四十肩・五十肩の症状に似ていますが、レントゲンを撮れば石灰がたまっているか分かります。肩甲骨(肩峰・肩の屋根の骨)の下に、白い塊として映ります。


 肩のどの部分が、どんな時に、どのように痛むのか、痛む状況を問診で聞き取り、肩がどのくらい動くのか可動域をチェックし、レントゲンのほか、エコー(超音波)やMRIなどの画像検査で、腱板断裂など他の肩の病気の可能性を排除したうえで、石灰沈着性腱板炎と確定診断します。


 治療は、痛みと炎症を取り除くため、消炎鎮痛剤を飲んだり湿布を貼ったりします。通常1週間ほどでだいぶよくなります。痛みがひどい場合は、肩峰下滑液包(腱板の上にある袋)にステロイド剤や局所麻酔薬を注射します。


 炎症がおさまれば、石灰が残っていても症状はやわらぎます。石灰は徐々に血液中に吸収され、数カ月も経てば小さくなったりなくなったりすることも多いです。肩の動きが悪くなれば、痛みが落ち着いてからリハビリを行います。


 ほとんどの患者さんは、このような外来での治療でよくなります。激しい痛みのため、治らないのではないかと心配される患者さんも多いのですが、加齢に伴い誰でもかかる可能性のある病気で、適切な治療の継続で、その症状は軽快、治癒する病気なので、必要以上に恐れることはありません。


 急性の場合、再発は多くないですが、慢性だと再発することもあります。痛みはないか、肩はしっかりと動くかを確認し、きちんと治療することが大切です。


 まれなケースですが、飲み薬や貼り薬、注射、リハビリなどの外来治療を2〜3カ月間行っても痛みが消えず、日常生活に支障がある場合には、内視鏡で腱板に沈着した石灰を切除するなどの手術が必要になります。


 荷物を持つ、服を脱ぎ着する、料理をする…生活に欠かせない動作の起点となる肩は、体の中で最も可動範囲の広い関節です。肩に痛みや不自由を感じると、生活の質の低下に直結します。また、肩の痛みは「年のせい」や「四十肩・五十肩」と自己判断で決めつけ、放っておいたり、中には整体・カイロプラクティックなどで不適切な施術を受けて、悪化させてしまう人もいます。


 正確な診断ができるのは整形外科医だけです。肩の病気はさまざまで、それぞれに発症のメカニズムも対処法、治療法も違います。肩に痛みや違和感があったら、すぐにかかりつけの整形外科で診てもらい、何が原因かを突き止め、軽症のうちに治療を始めることが何よりも重要です。

 

 寒い季節になり、気温が下がってくると、「ヒートショック」という言葉を耳にするようになると思います。※1入浴中の事故数年間19,000人程といわれています。

 ※1(厚生労働省 入浴関連事故の実態把握及び予防策に関する研究について)


 今回は、ヒートショックの予防対策についてお話ししたいと思います。


■ヒートショック」とは■

 暖かい場所から寒い場所へ移動したときに、急激な温度変化によって血圧が大きく変化することが原因で起こる健康障害です。「高齢者の方がなりやすい」というイメージをもつ方も多いでしょう。年齢だけでなく病気や習慣なども、ヒートショックを引き起こす要因の一つとなり得るものです。


 ヒートショックは、急激な温度変化によって引き起こされるため、温度差が大きい場所ほど発生リスクが高まります。中でも、最もヒートショックが起こりやすいのは冬場の浴室です。


1.暖かいリビングから寒い脱衣所へ移動(血管収縮、血圧上昇)

2.寒い脱衣で衣服を脱ぎ、裸になって冷えた浴室に入る(さらに血圧が上昇)

3.浴槽でお湯に浸かる(血管拡張、血圧低下)

4.お風呂から上がり、再び寒い脱衣所へ入る(血管収縮、血圧上昇)


■ヒートショックを発症しやすい人■

・65歳以上の高齢者

・不整脈、高血圧、糖尿病、動脈硬化の持病がある

・狭心症や心筋梗塞、脳出血、脳梗塞などにかかった経歴がある

・浴室や脱衣所に暖房設備が設置されていない

・一番風呂や42℃以上熱めのお湯に浸かる習慣がある

・食後や飲酒後にお風呂に入る習慣がある


 高齢者はもちろん、血管に弾力性のある若者も食後・飲酒後にお風呂やサウナに入ってしまうとヒートショックになる可能性があるため注意しましょう。


■ヒートショックの症状■

 軽度の症状では「めまい」や「立ちくらみ」が起きます。症状が出たら、その場にゆっくりしゃがむか、可能であれば横になり、血圧の変動が落ち着くのを待ちましょう。

しかし、重度のヒートショックとなると、以下のような症状がみられます。

・意識の消失

・激しい頭痛

・吐き気、嘔吐

・激しい胸の痛み

・ろれつが回らない

・四肢の脱力感、麻痺


 このような重度の症状がみられる場合、脳内出血、脳梗塞、心筋梗塞が疑わしい症状が現れた場合は、すぐに家族や救急に助けを求める必要があります。迷わず119番に通報することをおすすめします。


■ヒートショックを防ぐための対策■

1.脱衣所やトイレに暖房器具の設置

2.入浴前にシャワーで浴室を暖める

3.入浴前後に水分をとる

4.入浴前後の食事・飲酒は避ける

  食後に入浴をする場合、30分以上の間を空ける。飲酒についても、晩酌をするなら

  入浴後1時間以上が経過してから飲み始めるのがポイント。

5.熱いお湯での入浴や長湯は避ける

 ※2お湯の温度は41℃以下で10分以内にお風呂から上がることを推奨しています。

                (厚生科学指定型指定研究 入浴関連事故研究班)

 また、お湯を低温にしても、長湯をすると心臓や血管に負担がかかるおそれがあります。

 

 これから寒くなり、お風呂に入る機会が多くなってくると思います。

ヒートショックは、日頃の対策でリスクを低減することができます。参考にしてみてください。

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