骨は「一度でき上がったらおしまい」ではなく、生きている臓器として活動しています。
常に古い骨から新しい骨に作り替える新陳代謝を繰り返すことで、骨を健康な状態に維持しています。この新陳代謝を骨代謝といいます。
骨代謝のサイクルはまず破骨細胞と呼ばれる細胞が、古くなった骨を溶かしていきます(骨吸収)。そして、溶かされた部分に骨芽細胞と呼ばれる細胞が集まり、新しい骨を作っていきます(骨形成)。骨吸収と骨形成のバランスが保たれている間は、骨量(骨密度)に変化はありません。
しかし、何らかの原因で骨吸収の働きが骨形成よりも高まってしまうと、骨がスカスカになってもろくなってしまいます。これが骨粗しょう症です。
今回は当院で骨粗しょう症の治療に用いられている注射薬・点滴についてご紹介します。
1)骨吸収(古くなった骨を壊す)を抑える薬
・ビスホスホネート製剤(当院では ボナロン点滴、ボンビバ静注 月に1回)
破骨細胞に作用しこの細胞の働きを抑えることにより、骨吸収を抑え骨密度と骨強度を高める作用します。
・ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤(当院ではプラリア皮下注 6ヶ月に1回)
RANKLとは、破骨細胞の形成・活性化などを促進するたんぱく質です。この薬剤はRANKLに作用することで、骨吸収を抑制します。骨量(骨密度)を増やす働きがあります。
2)骨形成(新しい骨を作る)を促進する薬
・副甲状腺ホルモン製剤(当院ではテリボン皮下注 週1回)
骨形成促進作用を有するヒト副甲状腺ホルモン製剤で、新しい骨をつくる骨芽細胞を活性化させ、骨の質を改善しながら骨の量を増やすことによって骨の強度を高める働きがあります。
3)骨吸収を抑え、骨形成を促進する薬
・抗スクレロスチン抗体(当院ではイベニティ皮下注 1ヶ月に1回 12ヶ月間の投与)
骨細胞から分泌される「スクレロスチン」は、骨芽細胞による骨形成を抑制し、破骨細胞による骨吸収を促進する糖タンパク質。そのスクレロスチンに結合して その働きを阻害することで、骨形成を促進し、骨吸収を抑制します。
4)その他:骨粗鬆症に伴う痛みに使われる薬
・カルシトニン製剤(当院ではエルシトニン20Sディスポ 週1回もしくは2回の筋肉注射)
骨粗鬆症による背中や腰の痛みを訴えた患者さんに使われます。
当院での骨粗鬆症治療に用いられている注射薬・点滴薬についてのご紹介は以上になります。
治療開始前に、医師、看護師より薬についてのご説明をしております。ご不明な点など
ありましたら、お気軽にお声がけください。
また、骨粗鬆症を疑われる症状(・腰や背中がいたむ。・背中や腰が曲がる。・身長が縮んでくる等)が見られた場合、お早めの受診をおすすめいたします
引用文献
1) 旭化成ファーマ 骨検
2) 日経メディカル 処方薬事典
参考文献
1) 骨粗鬆症リエゾンサービス ライフサイエンス出版
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