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 2018 年の日本人の平均寿命は女性が87.32 歳、男性が81.25 歳で、ともに過去最高を更新しました。(厚生労働省「簡易生命表」2018 年)


 ただ、長寿は手放しで喜べない面があります。「健康寿命」という言葉を知っていますか。介護を受けたり、病気で寝たきりになったりせず、自立して健康に生活できる期間とされ、2016 年で女性は74.79 歳、男性は72.14 歳。つまり平均寿命より、女性は12 年、男性は9 年ほど短いということになります。長生きをしても支援や介護が必要となる期間も長いことが課題となっているのです。今後さらに高齢化が進む中で、単なる長寿ではなく、健康寿命を意識していく必要があります。


 2016 年の厚労省「国民生活基礎調査」によると、65 歳以上の介護が必要になった方の原因は『骨折・転倒』『関節疾患』が全体の22.7 %を占めています。女性の場合、『骨折・転倒』『関節疾患』が全体の27.8 %を占めており、認知症や脳卒中を上回っています。骨や関節の健康は、全身の健康につながります。健康寿命を延ばし、いきいきとした老後を過ごしていくためには、骨や関節の健康を保つのが非常に重要であることが分かるデータといえます。身長が縮んだ、背中が曲がった、わずかに腰が痛い…などの小さな兆候をきっかけに整形外科を受診し、検査してみたところ、思いもかけず「骨折です」と診断されて驚いた。そんなケースも少なくありません。これが、特に思い当たる節もないのに発症している「いつの間にか骨折」です。


 いつの間にか骨折は、「骨粗しょう症」により背骨の椎体がつぶれる骨折「(骨粗しょう症性)脊椎圧迫骨折」のことで、年間約30 万人以上に発症しています。この病気は、骨がもろくなったことにより、じわじわとつぶれるように症状が進行するため、骨折が進んでいる間も痛みを感じないことがあります。もっと心配なのは、背骨は小さな骨が積み重なった構造で、1 カ所がつぶれると、それが引き金となって2 カ所、3 カ所と骨折が連鎖・拡大する恐れがあることです。


 骨粗しょう症による痛みが出ない脊椎圧迫骨折=いつの間にか骨折は自覚しにくく、骨折していても放置されやすい疾患です。患者さんの3 分の2 が未受診という疫学調査の結果もあるほどです。「腰が曲がる」「背中が丸くなる」などは単なる老化現象と思われがちですが、実は背骨の椎体がスカスカになって骨折し、骨が変形した脊椎圧迫骨折の一つなのです。骨折がきっかけで脊髄が圧迫されて神経がまひしたり、心臓や消化管に障害を起こしたり、脊椎圧迫骨折が命にかかわってくるケースも珍しくありません。

いつの間にか骨折をしないためには、まずは骨粗しょう症の予防が重要です。骨密度が低下して骨がもろくなる骨粗しょう症は、全国に約1300 万人の患者がいます。男性300万人に対し、女性は1000 万人と圧倒的に多いです。(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会:2015)


 骨粗しょう症を防ぐには、生活習慣への細かな気配りが必要です。骨の形成に必要なカルシウム、ビタミンD、ビタミンK、たんぱく質などを含む食物を意識しながら、栄養バランスのよい食生活を心掛けましょう。カルシウムの多い食品は牛乳、ヨーグルト、豆腐など。ビタミンBはニシンやイワシなどに含まれ、ビタミンKは緑黄色野菜に多く含まれます。こうした食材を毎日の食事に取り入れ、骨を強くすることです。ビタミンDは食事以外でも、紫外線を浴びることで、皮下でつくられます。日照時間の少ない北海道は紫外線量が少ないので、1 日10 分以上は日光浴のために外出して歩くことを心掛けましょう。適度な運動も大切です。運動して骨に力がかかると、骨密度が充実します。無理のない範囲で継続して体を動かしてください。運動のための時間や環境を整えられないという方は、例えば、電車の中で一駅分つま先立ちをして揺れに耐えたり、テレビを観ながらスクワットや片足立ちをしたりするなど、ちょっとした隙間の時間を利用して体を動かすのがおすすめです。

 

 骨粗しょう症と診断された場合は、骨を壊す細胞の働きを抑え、骨が壊れにくくする薬や、カルシウム・ビタミンD・ビタミンK薬などを処方するとともに、食事・運動療法に取り組んでもらいます。骨粗しょう症や骨量の減少を早期に発見・治療し、いつの間にか骨折を未然に防ぐには「骨量測定」が有効です。ぜひ早いうちから、適切な予防や治療に取り組んでほしいと思います。


 骨粗しょう症もいつの間にか骨折も、目に見えない骨の病気だけに、定期的に検査を受け、自分の骨の状態を知っておくことが大切です。骨量の確認は女性の場合、閉経前は5 年に一度、閉経後は2〜3 年に一度でいいでしょう。骨粗しょう症は女性に多い病気ですが、男性も決して安心はできません。男性も高齢になるにつれ、骨粗しょう症を発症する人が増えています。男性といえども、自分の骨について日ごろから注意することが大切です。


 予防と早期発見・治療が、骨粗しょう症といつの間にか骨折の「転ばぬ先の杖」。今日から、骨の健康対策を心掛けてほしいと思います。

 

 

 医療機関を受診する際、会計での支払いが気になる方も多いと思います。


 病気や怪我などで医療費の負担が大きくなった時のために、健康保険には「高額療養費制度」が用意されています。しかし、「高額療養費制度」では、医療機関より請求された医療費の全額を支払ったうえで申請することにより、自己負担限度額を超えた金額が払い戻しされます。しかし、一時的にせよ多額の費用を立て替えることになるため、経済的に大きな負担となります。


 これから高額な医療費がかかることが分かっている場合には、まず、『限度額適用認定証』を取得しましょう。


 『限度額適用認定証』を病院の窓口に提示すれば、請求される医療費が、高額療養費制度の自己負担限度額までとなります。支払う医療費を減らすことができますし、あとから払い戻しを申請する手間もかかりません。


 あらかじめ『限度額適用認定証』の交付を受け、『限度額適用認定証』を保険証と併せて医療機関等の窓口(※1)に提示すると、1ヵ月 (1日から月末まで)の窓口でのお支払いが自己負担限度額まで(※2)となります。


※1 保険医療機関(入院・外来別)、保険薬局等それぞれでの取扱いとなります。

※2 同月に入院や外来など複数受診がある場合は、高額療養費の申請が必要となることがあります。保険外負担分(差額ベッド代など)や、入院時の食事負担額等は対象外となります。


 なお、『限度額適用認定証』が必要なのは70歳未満の人だけでしたが、2018年8月から、70歳以上でも一部の人は必要となりました。収入が「現役並み」で、年収が約370万円~約1,160万円に相当する人は、『限度額適用認定証』が必要になります。手続きは、加入している健康保険の窓口に申請することによって『限度額適応認定証』を発行してもらいます。


 申請先、制度についてご不明な点がありましたら、当院事務までお問い合せ下さい。


 



 中高年になると、膝に痛みや違和感を感じる人が増えてきます。その多くは『変形性膝関節症』という病気により生じる症状です。国内では約1000万人もの患者さんが変形性膝関節症に悩まされているといわれています。


 変形性膝関節症は、膝の関節軟骨がすり減り、関節内に炎症が起きたり、関節が変形したりして痛みが生じる病気です。加齢や肥満、過去の膝の外傷などが原因とされ、特に女性に多くみられます。この病気は50歳以上の中高年に多くみられますが、40歳代で発症する患者さんも少なくありません。加齢とともに誰にでも起こり得る病気といえます。

 

 変形性膝関節症は、長い期間をかけてゆっくりと進行していく病気です。初期段階ではほとんど自覚症状はありません。最初に出てくる症状は、立ち上がりや歩き始めといった動作を始める時、階段の上り下りの時に感じる痛みや違和感で、しばらく休むと痛みがなくなる場合がほとんどです。

 

 症状が進むと、安静にしていても痛みが取れにくくなります。炎症により関節内に水がたまって腫れるケースもあります。俗に「関節に“水”がたまった」という状態です。さらに症状が進むと、膝の曲げ伸ばしが困難になったり、膝が大きく変形してO脚になり、歩きにくくなったりするなど、日常生活にも支障をきたすようになります。高齢の方によく見られるO脚のほとんどが、変形性膝関節症が原因と考えられます。最終的には膝が満足に動かなくなって、歩くこと自体が困難になります。


 変形性膝関節症は、診察、X線(レントゲン)写真、MRIなどで診断します。ただし、関節軟骨の摩耗が進んでいても痛みをあまり感じない患者さんがいたり、逆に摩耗があまり認められないのにもかかわらず強い痛みを感じる患者さんもいたりするなど、X線写真の画像と症状は必ずしも一致しません。また、変形性関節症に似た症状のある関節リウマチと見極めるため、血液検査を行うこともあります。関節軟骨は一度すり減ってしまうと、完全に元の状態には戻りません。しかし、早期に治療を開始することで、痛みや腫れの症状を軽減し、進行を最小限に抑えられます。日常生活の不便を軽減することにもつながります。


 膝の病気は、お年寄りがなるもの… そんな誤解をしていませんか? また、「年だから仕方がない」と痛みを我慢したり、自己判断だけで対処したりするのもいけません。もし変形性膝関節症が原因であれば、そのまま放っておくと、悪化していく一方です。変形性膝関節症は、立ち上がったり歩き始めたりする動き始めの痛み・違和感が受診のサインと覚えておきましょう。少しでも膝に不安を感じたなら、まずは一度、整形外科で膝の診察を受けるようにしてください。進行する前に、早めに相談することが何よりも大切です。


 変形性膝関節症の治療法は、筋力トレーニングやダイエットなどの運動療法や生活指導、痛み止めの飲み薬や膝関節内にヒアルロン酸を注射するなどの薬物療法といった「保存療法」と、手術を行って痛みの原因を根本的に取り除こうとする「手術療法」に分けられます。治療の第一は保存療法です。まずは、適切な食事療法と運動療法で減量し、膝への負担を減らします。また、関節を動かさないでいると、痛みが悪化することもあるので関節周りの筋肉を鍛えます。特に、膝には体重の3倍荷重が掛かります。変形性膝関節症の場合は、大腿前面の筋肉(大腿四頭筋)を強化するトレーニングを行います。このトレーニングは、変形性膝関節症の治療法でもあり予防法にもなります。


 また、膝関節内に直接ヒアルロン酸を注射することで、関節軟骨を保護し、痛みや炎症を抑えて症状を改善し、病気の進行を抑える効果も期待できます。保存療法で痛みが改善しなかったり、変形の度合いが強い場合は手術を行います。病気の進行程度により、術式が異なります。初期の場合、「関節鏡視下手術」という内視鏡を使った手術を行います。皮膚を2カ所小さく切開して、片方に内視鏡、もう片方に切除用の器具を入れて、滑膜切除や半月板部分切除、症例によっては半月板縫合も可能です。中等度進行した症例は、「骨切り術」の適応となります。関節近くの骨を切って骨の形状や位置を矯正する「高位脛骨(けいこつ)骨切り術」も近年良好な治療成績を上げ、注目されています。関節軟骨が完全にすり減って消失していたり、高度に変形している末期症例には「人工関節置換術」を行います。痛みのある関節軟骨の表面を切除し、特殊な金属(コバルトクロム合金・チタン合金・オキシニウム・セラミックなど)やポリエチレンなどを素材とした人工関節に置き換える手術です。


 変形性膝関節症は、長い時間をかけて徐々に進行するため、現状では完全に予防・回避する方法はありません。ただ、早期発見で適切な治療を受ければ、健康寿命の延伸につながります。繰り返しになりますが、膝に痛みや違和感がある人は、積極的に整形外科を受診し、自分の膝がどのような状態なのかを一度確かめ、しっかり把握しておく事をお勧めいたします。  


 
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