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 今回は患者様からよく聞かれる「トンネル型 MRI とオープン型 MRI は何が違うの?」

という質問にできるだけ分かりやすくまとめさせて頂きます。

トンネル型 MRI というのは、主に大病院で使われているこのような MRIです。



一方、オープン型 MRI というのは当院でも使われているこのような MRI になります。


 MRI 検査では磁力(磁石の引き合ったり反発したりする力)を用いた検査になるのでどちらも磁石を使っているのですが、前者は超電導磁石、後者は永久磁石と作りが異なるため磁力の強さが大きく変わります。一般的に、超電導磁石を用いたトンネル型 MRI は、1.5~3T (テスラ)、永久磁石を用いたオープン型 MRI は、0.25-0.4Tとされています。


 それでは、磁力が異なると何が変わってくるのか。患者様に大きく関わるものでは以下の3点になります。


① 検査時間

検査時間は患者様が一番気になるポイントだと思いますが、磁力が大きくなると基本的に検査時間は短くなります。しかし、整形外科領域においては造影剤を用いた検査をすることもないので、0.25Tもあれば十分短い時間での検査が可能なのです。当院での平均検査時間も15-30分とトンネル型 MRI の検査時間とほぼ変わりません。


② MRI画像の見やすさ

磁力が強いほど効率よく信号を収集することが可能となるため、MRI 画像も見やすい画像となります。整形外科領域においては、より細かく撮影することが可能になりますが0.25TのMRIでも診断に際し遜色ない画像を撮影することができます。(他科においてはオープン型 MRI では検査出来ないこともあります。)


③ 安全性

磁力が大きくなると安全性は下がります。あまり認知されていませんが、近年でも韓国で死亡事故が発生したなど MRI は危険な検査でもあります。磁力の大きいトンネル型 MRI 検査では誤って金属類を持ち込むと重大な事故につながりますが、オープン型 MRI では磁力が弱いためそのような報告はされていません。当院では安全性の高いオープン型 MRI を使用しており、検査前に同意書の記入をお願いした上で検査前に金属を身に着けていないかの確認を徹底させて頂いているので、患者様には安心して検査して頂けると思います。  以上 3 点が、磁力の大きさによるトンネル型 MRI とオープン型 MRI の違いになります。

 整形外科領域においては検査時間及び診断能は高機能とされているトンネル型 MRI と大差なく、安全性が担保されているオープン型の方が適しているように思います。

 また、オープン型 MRI は名前の通り開放的な MRI 機器となっています。過去に検査した閉所恐怖症の方でも「トンネル型 MRI は出来なかったけどオープン型なら大丈夫だった。」というお声をよく頂いています。他院のトンネル型 MRI では検査できなくて症状にお悩みの方は是非、当院へご相談ください。



 半月板損傷の解説は、前号でしましたので、今回は治療法についてお話しさせていただきます。半月板損傷治療には、保存療法と手術療法の2つがあります。


 保存療法は、半月板損傷の程度が比較的程度で、ロッキングの症状がない場合、また、加齢変化による損傷の場合、患者さんが手術を希望しない場合などに選択される治療です。

 

 手術などの外科的方法によらずに症状改善を目指します。ヒアルロン酸の関節内注射や抗炎症薬の服用などで痛みを軽減しながら、大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)の強化などリハビリ・運動療法を併用すると症状が改善する人も少なくありません。肥満の人は減量も効果的です。


また、サポーターを使って膝関節を安定させたり、O脚が原因で膝の内側に体重が偏る人には足底板(インソール)などの装具を使って偏りを減らしたりする方法も有効です。

 

 特に重要なのがリハビリ・運動療法で、筋力を高めて膝を安定させるだけでなく、最近の研究からは軟骨組織の細胞の炎症を和らげたり、関節内や周囲に炎症を抑える物質を生み出す効果があることも明らかになっています。当院では、膝まわりの筋肉運動や膝の動きを硬くしないために行う可動域訓練を自宅でも継続して行えるよう、リハビリを担当する理学療法士の指導を受けてもらっています。

 

 診療で長年半月板損傷の患者さんを診てきた実感として、約7〜8割のケースは保存療法と運動の習慣化など日常生活の注意・見直しによって症状改善につながっています。


 半月板損傷の程度が重度の場合、また、若年層のスポーツ活動で起こった損傷で、早期の復帰を望んでいる場合、保存療法では改善せず、痛みなどで日常生活に支障を来している場合は手術療法を検討します。


 手術には主に損傷した部分を切り取る「切除術」と、縫い合わせる「縫合術」の2種類があります。手術では内視鏡を用い、切除術か縫合術かを選択しますが、近年は半月板を温存することを重視した縫合術が主流となっています。


 中高年で変形性膝関節症を伴う場合は、すねの骨を切ってO脚を矯正する骨切り術や、変形して傷んだ関節の骨の表面を取り除き、金属とポリエチレンでできた人工関節に置き換える人工関節置換術もいっしょに行う必要のあるケースもあります。


 繰り返しになりますが、半月板損傷の多くは保存療法で症状が改善します。安全性や痛みなどへの不安から手術に抵抗がある人は多いと思いますが、早期に受診して病気をこじらせる前に手を打てば、手術を行わない保存療法で対応できるケースの方が多いです。


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 半月板損傷が大きな要因となる変形性膝関節症と診断された人は、そうでない人に比べ、要介護になるリスクが約6倍高くなることが厚労省の研究で分かっています。


 変形性膝関節症にかかるリスクを減らすためにも、スポーツなどで半月板を痛めた時は放置したり自己流の対処でやり過ごしたりせず、かかりつけ整形外科医で正しい診断と治療を受けて完治させること。それが将来の膝の健康を守り、いつまでも自分の脚で元気に歩き、健康寿命を延ばすことにつながります。


※ 最後に、子どもに多くみられる少し特殊な半月板損傷についても触れておきます。

 

 通常、三日月型をしている半月板が生まれつき、半月または円板の形をしている場合があり、これを「円板状半月板」といいます。円板状半月板はほとんどの場合、両膝の外側の半月板に発生します。欧米ではまれですが、日本人では比較的多く20〜30人に1人いるとされます。病気ではなく、その人の体の特徴と考えられており、生涯を終えるまで特に症状が出ない人もいます。

 

 MRI検査などで偶然発見された場合も、無症状であればすぐ治療する必要はないのですが、この円板状半月は子どもの半月板損傷の原因となります。正常の半月板に比べてサイズが大きいため負荷がかかりやすく、半月板そのものの強度も弱いため、小さな力でも損傷してしまうことがあり、子どもが幼稚園や保育園、小学校で「長く歩く」「走る」など、ちょっとした活動をした後で膝の痛みを訴える場合、円板状半月板であることが損傷の原因になっているケースが少なくありません。


 治療は、鎮痛剤やサポーターなどで痛みを軽減させる保存療法を試みます(関節に水のたまる方はスポーツ活動を少し制限することもあります)。それでも症状が続く場合は手術が必要になります。

 

 お子さんがちょっとした運動や日常生活で膝の痛みを訴える場合は要注意です。一度、整形外科で相談することをお勧めします。



 今回は、私が専門にしている膝にある「半月板」の話です。


 半月板という言葉は、野球選手やマラソン選手、力士などプロアスリートの故障のニュースなどで聞いたことがあると思います。


 半月板は、太ももの大腿(だいたい)骨とすねの脛(けい)骨の間にあり、骨表面の軟骨の摩耗を低減させる組織で、関節の動きを安定化させ、衝撃を吸収するクッションのような役割を担っています。


 半月板は内側と外側に1枚ずつあり、通常は「C」の形(半月板とは呼びますが、むしろ三日月のような形)をしています。その半月板が割れたり、ひびが入ったりする状態を半月板損傷といいます。

 

 半月板損傷の原因は大きく分けて2つあり、スポーツや事故によるものと、加齢による変性です。一般的に、スポーツが原因のものは10〜20代の若い人に多くみられます。キックや体の向きを急に変える切り返し動作、ジャンプした後の着地などが引き金になることが多いです。加齢に伴う変性によるものは40〜50代の中高年に多く、筋力の低下や体重の増加で慢性的に膝に負担がかかることで起こります。


 初期の症状は、歩行時や階段の昇降で痛みがあったり、引っ掛かりを感じたりします。

また、膝が真っ直ぐに伸びない、曲げると痛いなどの症状も出ます。ひどくなると、膝の曲げ伸ばしができない「ロッキング」という状態になります。これは、ちぎれた半月板が関節に挟まって膝が動かなくなる症状で、激痛で歩けなくなる場合もあります。また、炎症を起こして、膝に水がたまることもあります。


 損傷した半月板を放置すると、中高年以降に最も多い膝の病気「変形性膝関節症」を引き起こす要因ともなります。変形性膝関節症は、膝の関節軟骨がすり減り、関節内に炎症が起きたり、関節が変形したりして痛みが生じる病気。加齢や肥満、過去の膝の外傷などが原因とされますが、最近の研究では、半月板の損傷や逸脱が密接にかかわっていることが分かってきました。逸脱とは、けがや加齢により半月板の弾力性が低下し、正しい位置からずれてしまうことで、本来半月板が持っている膝にかかる負担を分散したり、衝撃を吸収したりする役割を果たせなくなり、関節軟骨も傷み始めます。


 国内で変形性膝関節症の自覚症状がある患者さんは約1000万人、潜在的には約3000万人に達するとされていますが、そのうち約半数は半月板に問題を抱えているとみられています。日本人に多いO脚の人は、特に内側の半月板に負担がかかりやすいので要注意です。


 診断は、まず診察で関節や筋肉の状態、膝の動く範囲などをチェックし、続いてレントゲン撮影など画像検査を行います。半月板は、骨組織ではないためレントゲンには写らないので、MRI検査を併用して診断します。MRIでは、半月板の状態のほか靭帯や関節軟骨などの膝内部の構造を調べることができます。


 膝の痛みや違和感が本当に半月板の損傷によるものか、はたまた変形性膝関節症によるものか、すでに両方の病気を発症してしまっている可能性もあります。患者さん一人ひとりの病状・病態に応じた最適な治療を進めていくために、原因となる病気を慎重に見極めていきます。


 最近、膝に違和感を感じた方は、一度整形外科受診をお勧めさせていただきます。


 次号では、治療についてお話しようと思います。

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