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放置すると、変形性膝関節症を引き起こす「半月板損傷」



 今回は、私が専門にしている膝にある「半月板」の話です。


 半月板という言葉は、野球選手やマラソン選手、力士などプロアスリートの故障のニュースなどで聞いたことがあると思います。


 半月板は、太ももの大腿(だいたい)骨とすねの脛(けい)骨の間にあり、骨表面の軟骨の摩耗を低減させる組織で、関節の動きを安定化させ、衝撃を吸収するクッションのような役割を担っています。


 半月板は内側と外側に1枚ずつあり、通常は「C」の形(半月板とは呼びますが、むしろ三日月のような形)をしています。その半月板が割れたり、ひびが入ったりする状態を半月板損傷といいます。

 

 半月板損傷の原因は大きく分けて2つあり、スポーツや事故によるものと、加齢による変性です。一般的に、スポーツが原因のものは10〜20代の若い人に多くみられます。キックや体の向きを急に変える切り返し動作、ジャンプした後の着地などが引き金になることが多いです。加齢に伴う変性によるものは40〜50代の中高年に多く、筋力の低下や体重の増加で慢性的に膝に負担がかかることで起こります。


 初期の症状は、歩行時や階段の昇降で痛みがあったり、引っ掛かりを感じたりします。

また、膝が真っ直ぐに伸びない、曲げると痛いなどの症状も出ます。ひどくなると、膝の曲げ伸ばしができない「ロッキング」という状態になります。これは、ちぎれた半月板が関節に挟まって膝が動かなくなる症状で、激痛で歩けなくなる場合もあります。また、炎症を起こして、膝に水がたまることもあります。


 損傷した半月板を放置すると、中高年以降に最も多い膝の病気「変形性膝関節症」を引き起こす要因ともなります。変形性膝関節症は、膝の関節軟骨がすり減り、関節内に炎症が起きたり、関節が変形したりして痛みが生じる病気。加齢や肥満、過去の膝の外傷などが原因とされますが、最近の研究では、半月板の損傷や逸脱が密接にかかわっていることが分かってきました。逸脱とは、けがや加齢により半月板の弾力性が低下し、正しい位置からずれてしまうことで、本来半月板が持っている膝にかかる負担を分散したり、衝撃を吸収したりする役割を果たせなくなり、関節軟骨も傷み始めます。


 国内で変形性膝関節症の自覚症状がある患者さんは約1000万人、潜在的には約3000万人に達するとされていますが、そのうち約半数は半月板に問題を抱えているとみられています。日本人に多いO脚の人は、特に内側の半月板に負担がかかりやすいので要注意です。


 診断は、まず診察で関節や筋肉の状態、膝の動く範囲などをチェックし、続いてレントゲン撮影など画像検査を行います。半月板は、骨組織ではないためレントゲンには写らないので、MRI検査を併用して診断します。MRIでは、半月板の状態のほか靭帯や関節軟骨などの膝内部の構造を調べることができます。


 膝の痛みや違和感が本当に半月板の損傷によるものか、はたまた変形性膝関節症によるものか、すでに両方の病気を発症してしまっている可能性もあります。患者さん一人ひとりの病状・病態に応じた最適な治療を進めていくために、原因となる病気を慎重に見極めていきます。


 最近、膝に違和感を感じた方は、一度整形外科受診をお勧めさせていただきます。


 次号では、治療についてお話しようと思います。

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