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牽引療法とは...


 整形外科で用いられる牽引療法とは、直達牽引法(骨を直接牽引する方法)と介達牽引法(皮膚を介して牽引する方法)の2種類があります。


 人間の脊椎(背骨)は頚椎(首の骨)から尾骨まで33個の骨が重なってできています。その中を脊髄が通り、さらにその脊髄から多数の末梢神経が、骨と骨の間を通ってできています。この骨は年齢や労働、ケガのために変形したり、骨と骨の間にある椎間板が飛び出したり(椎間板ヘルニア)してきます。この変形した骨や椎間板が脊髄や末梢神経に触れると、身体の一部に痛みや痺れ、麻痺などが起こってきます。頚椎や腰椎はこの変化が最も起こりやすい場所になります。


 今回は、当院のリハビリテーションで行っている介達牽引法である頚椎牽引療法と腰椎牽引療法のお話をしたいと思います。


 患者さんへ牽引装具を装着し電動牽引装置を用いて、1回10分首または腰をゆっくり牽引と休止を繰り返しながら行います。頚椎牽引は座位で行い、腰椎牽引は臥位で行っていきます。痛みはなく、専用の機具を使って軽く身体を伸ばすようなイメージになります。


〇 頚椎牽引

 頚部を自動で間欠牽引(一定の時間一定の力で、数秒単位の牽引と休止を交互に行なうこと)します。牽引を行うことで狭くなった骨の間隔を拡げ神経根や椎間板への圧力を軽減させ痛みを緩和させます。また、椎間板などの軟部組織の血行不良の改善や硬直した筋肉の緩和などの作用もあります。


【適応疾患】

 頚椎症・頚椎症性神経根症・頚椎椎間板ヘルニア・頚椎捻挫など


〇 腰椎牽引

 腰部を自動で間欠牽引(一定の時間一定の力で、数秒単位の牽引と休止を交互に行なうこと)します。背骨を伸ばすことにより椎間板や関節への負担が軽減され、背骨周辺のこわばった筋肉の緊張が和らぎ、筋肉や靭帯などの血流改善に効果があります。また、神経根や椎間板の炎症を沈静化させ疼痛、神経痛の緩和があげられます。腰の筋ストレッチや手技的なマッサージ的効果もあります。


【適応疾患】 

 腰椎椎間板ヘルニア・腰椎椎間板症・腰椎脊柱管狭窄症・坐骨神経痛・腰椎捻挫など



牽引療法の一般的治療効果として以下のものがあげられます。

① 椎間関節周囲軟部組織の伸張

② 椎間板、椎間関節の軽度の変形、変位の矯正

③ 椎間関節の離開

④ 椎間孔の拡大

⑤ 椎間板内圧の陰圧化と椎体前後靭帯の伸張による膨隆髄核の復位化

⑥ 攣縮筋の弛緩

⑦ マッサージ効果による循環改善・促進

⑧ 患部の安静・固定

(嶋田智明,高見正利,田口順子 他;物理療法マニュアル,医歯薬出版株式会社 引用)


牽引療法による症状の改善率の報告では 30 ~ 50 % 程度とありますが、患者様によっては、著名な改善を示す例もあるとされています。(Basmajian JV:Manipulation,Traction and Mas₋sage. Third edition,Williams & Wilkins,1985,pp172-173.)


【禁忌】

脊椎の感染症(骨髄炎・脊椎カリエス・強直性脊椎炎など)、悪性腫瘍、急性の激しい痛みが伴う場合、骨粗鬆症、骨軟化症、脊椎分離症、重篤な心臓疾患および肺疾患、すべり症、重篤な関節リウマチ、妊婦など


なお、牽引療法の開始には医師の診察・指示が必要となります。

首や腰の痛みがなかなかとれず牽引治療を試したいという方は、一度医師に相談してみてはいかがでしょうか。


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