みなさんは股関節を曲げたとき、お尻周りに突っ張るような痛みを感じたり、股関節の前側に何かが挟まる(詰まる)ような痛みを経験したことがある方はいらっしゃるでしょうか?
その症状がひどくなってしまうと、しゃがむ動作や座る動作などの日常的な動きに支障をきたす場合もあります。そこで、今回はこのような症状がなぜ起きるのか、どのように対処を行えばいいのかを考えていきたいと思います。
●股関節の構造
股関節とは、太ももの大きい骨である大腿骨の付け根にある球状の大腿骨頭部分、受け皿である骨盤の寛骨臼からなる球関節という構造で成り立っています。この球関節というのは関節の運動軸が多数あり、それにより可動性が高い関節構造であると言われています。
加えて、股関節は寛骨臼が大腿骨頭をすっぽりと覆うような構造になっているため、他の球関節と比べて安定性の高い関節となっています。また、実際は骨だけでなく股関節周囲の筋肉や靱帯によって、さらに関節の安定性を向上させています。このおかげで股関節は、曲げる・伸ばす・脚を開く・脚を閉じる・捻るなどの自由度が高い動きを安定して行うことができています。
●股関節の働き
前述したように股関節は可動性・安定性が高く、様々な場面で活躍している関節の一つです。特にその働きの中でも膝関節や足関節と同様に、歩く・立つ・座るなどの日常生活動作における『体重の支持』という面で重要な役割を果たしています。以前、当院ブログにて触れたこともありますが、体重 60 kg の人間が両脚で立っている場合、左右の股関節にはそれぞれ体重の約1/3である約 20 kg の負荷がかかっていると考えられています。これが歩行中には体重の2~4倍である 120 ~ 240 kg 程度、走行中であれば体重の約4~5倍である約 240 ~ 300 kg 程度の負荷がかかります。
このような負荷を関節や靱帯、筋肉によって支えることで、人は日常生活を送ることができるようになっています。逆に、関節や靱帯、筋肉などのどれかに問題があると荷重に対するバランスが崩れてしまい、歩く・立つ・座るというような日常生活動作を十分にできない状態になってしまう可能性もあります。それだけ股関節による体重の支持は生活において重要な役割を担っています。
●股関節のつまり感の原因
股関節のつまり感は様々な原因や理由で生じることがあり、人によっては股関節に何かが挟まるような痛みとして感じることがあります。その代表的な一例として大腿骨寛骨臼インピンジメントというものがあり、寛骨臼縁と大腿骨頚部が衝突し周辺組織を傷つけ痛みを引き起こしてしまう状態のことを指します。
これは元々の大腿骨頚部や寛骨臼の形状が原因であることが考えられており、主な症状として、股関節の引っ掛かり感、鼠径部や大腿外側の動作時痛、歩行や階段昇降時の股関節痛などが挙げられます。これらの症状が持続してしまい適切な対処が出来なかった場合、股関節を構成している関節唇や関節軟骨の損傷を引き起こす可能性があり、それらがまた股関節周囲の痛みやつまり感を生じさせてしまうことがあります。
他のつまり感の原因として、お尻周囲の深層の筋肉が硬くなり大殿筋や中殿筋などが上手に使えなくなることが挙げられます。これにより、関節運動を行う際に股関節の前後で筋肉のバランスが取りにくくなり、股関節の前方で衝突が起きてしまいつまり感や痛みが生じてしまいます。この症状も生活の何気ない動きを制限してしまうことがあり、続いてしまうと他の部位でかばってしまい、その部位でも痛みを生じさせてしまうこともあります。
●改善や予防するにはどうするか
まず、大前提として元々の骨の構造上の問題は、運動やストレッチというような方法で根本的に改善することは難しいです。しかし、股関節の負担軽減や痛みの軽減、安定した関節運動の獲得に関してはある程度可能であると考えられています。
骨の構造に問題がなく筋力や筋のバランス、柔軟性の低下に問題がある場合においては、運動やストレッチ、温熱治療、電気治療等が有効であり症状の改善を図ることが期待できます。また、リハビリ治療以外にも普段の生活/仕事動作や姿勢などの見直しも重要であると考えられています。
生活/仕事動作の中で起きやすい悪い例
・長時間座ったまま作業を行う
・頻繁に前かがみになった状態で家事を行う
・がに股など崩れた姿勢で歩く など
これらが継続して行われてしまうと股関節周囲の筋肉などに過剰なストレスが加わってしまい、股関節の不調を引き起こしてしまいます。したがって、可能であれば作業や家事の合間に姿勢を変える時間を設けたり、途中で休憩を挟んだりとご自身でケアを行うことにも着目していただけると、症状の改善や予防がよりしやすくなると思います。
●最後に
今回は股関節のつまり感について書かせていただきましたが、当院リハビリテーションでも運動やストレッチ、温熱治療や電気治療などが可能です。また、具体的にどのような姿勢に気をつければいいか、自宅でどのような運動やストレッチを行えばいいかなどのアドバイスもさせていただいております。今回の記事の内容に当てはまる方やご興味のある方は当院医師やリハビリテーションスタッフにぜひご相談ください。
<参考・引用文献>
伊藤 鉄雄.股関節のバイオメカニクスとその臨床応用,臨床理学療法,1976,2(4),
p.3-10.
竹内 孝仁.股関節疾患の理学療法,臨床理学療法,1982,8(4),p.349-367
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