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骨や筋肉、脂肪、神経などにできる「骨軟部腫瘍」しこりや腫れ、こぶなどの自覚症状を見逃さないで‥

 

  ある日、入浴中に自分の腕や足、あるいは胸や背中に何かポコッとした膨らみ、腫れやしこりがあることに気が付きました。痛くはないけれども、徐々に大きくなっているような気がします。気になるので一度医者に診てもらおうと思いますが、皆さんならどの診療科を受診しますか? 外科? 皮膚科? 整形外科?


 もしピンポン球より大きな5cm以上のものだったら要注意。原因が分からないまま長引く「痛みのない膨らみ、腫れやしこり」は、骨や筋肉の腫瘍を疑うことも必要です。整形外科は骨や筋肉、脂肪、神経など「全身を診る」診療科で、問診やいろいろな検査から“その腫れやしこり”が体のどこが原因となっている病気であるかを見極めます。その上で、外科や皮膚科、神経内科や心療内科などほかの診療科へ紹介する窓口になることも多いです。どの診療科で治療を受けるのが最も良いか、その“交通整理”をするためにも、最初に整形外科の受診をお勧めします。


 聞き慣れない病名かもしれませんが、骨や筋肉の腫瘍のことを「骨軟部腫瘍」と呼びます。骨にできた腫瘍のことを「骨腫瘍」、筋肉・脂肪などの軟らかい組織にできた腫瘍のことを「軟部腫瘍」、あわせて骨軟部腫瘍といいます。


 腫瘍とは、体の中にできた細胞のかたまりのことです。腫瘍には良性と悪性があります。専門的に解説すると、悪性腫瘍は、無秩序に増殖しながら周囲に滲み出るように広がったり(浸潤)、体のあちこちに飛び火して新しいかたまりをつくったり(転移)するもののことをいいます。一方、浸潤や転移をせず、周囲の組織を押しのけるようにしてゆっくりと増える腫瘍が良性腫瘍です。良性といっても体に良い影響があるわけではなく「悪くはない」といったところでしょうか。腫瘍はまわりの細胞と関係なく増えて大きくなるので、体に悪い影響が出ることもあるからです。悪性は文字通り体に悪い影響があり、悪性腫瘍のことを「がん」といいます。


 骨軟部腫瘍はほとんどが良性で、悪性は年間で10万人に1〜2名程度と少数です。しかし悪性であれば、生命にかかわるとともに四肢への機能への影響もありますので、早期に診断し、治療を受けることが大事です。


 骨腫瘍は最初の症状は痛みがあることが多いですが、軟部腫瘍は悪性であってもあまり痛みを伴いません。腫瘍性疾患の当初の症状は、けがや障害と似ていて、打撲や炎症を見分けがつきづらいことも多いです。


 悪性の骨軟部腫瘍のことを「肉腫(サルコーマ)」といいます。「希少がん」の一つで、罹患率はすべてのがんのうちの約1%といわれています。骨の肉腫は細かく分けると多くの種類があります。割合が多いものは「骨肉腫」「軟骨肉腫」「ユーイング肉腫」などです。最も多い症状は痛みや腫れです。触ると硬く腫れていたり、熱をもっていたり、違和感を感じる方が多いです。病気が進むと骨が弱くなり、骨折を起こすから肉腫が見つかるケースもあります。高齢者に内臓に発生する一般的ながんとは異なり、骨の成長時期である15歳前後のひざや股関節、肩などの近くに生じることが多いのが特徴です。軟部腫瘍も筋肉や脂肪など全身のあらゆる軟らかい組織に発生し、30種類以上に分類されます。頻度としては「脂肪肉腫」が一番多く、ほかには「平滑筋肉腫」「粘膜繊維肉腫」が代表的なもので、脂肪肉腫は中高年に多く、平滑筋肉腫・粘膜繊維肉腫は高齢者に多く発生します。太ももや腕にしこりができ、発見されることが多いです。


 骨軟部腫瘍の診断はレントゲンやCT、MRI(磁気共鳴断層撮影)などの画像検査や血液検査などで行いますが、特にMRIが有用で、画像から良性か悪性かを診断できることがあります。大きなトンネル型の装置に強力な磁場を発生させて、ある周波数の電波を照射すると体の中の水素原子が移動します。一定時間経ってから照射を止めると、体内の水や脂肪など電波によって移動していた組織が元の位置に戻ろうとします。この時の、細胞組織の動きを画像として取得し、その画像から体内の異常を発見するのがMRI検査です。一般的に、MRI検査はレントゲンやCT検査と比較して撮影画像が鮮明だといわれています。MRI検査は、人体の約70%を構成している水分を元にして画像を取得するしくみとなっているので、得られる情報量が膨大です。また、画像を何層にも重ねて撮影する仕様のため取得画像がより詳細になり、結果的に精度の高い診断を行うことができます。情報量が多く撮影に時間がかかるため、どうしても検査時間は長くなりますが、放射線被ばくがなく、15~20分ほど横になっているだけで検査ができるので、体に負担が少ない検査方法といえます。

 

 最終的に診断を確定するには、病変部から組織の一部を採取し、顕微鏡で観察する病理検査が必要です。


 治療法は病態・病状・病期によって変わりますが、多くの場合は抗がん剤と手術を組み合わせて行います。整形外科だけでなく、内科や外科、放射線科、病理科など、骨軟部腫瘍・肉腫に精通した専門医が診療科の枠を超えて緊密に連携し、一人ひとりの患者さんに最も適した集学的治療を行うことが重要です。治療体制が整っている施設にも限りがあるため、治療は骨軟部腫瘍・肉腫を専門的に扱っている大学病院・総合病院を紹介することになります。


 四肢に生じた悪性骨軟部腫瘍では、かつては少なくない患者さんが手足の切断にいたるケースもみられましたが、現在では、画像診断の進歩や治療法の発達により、多くの患者さんが手足を残した手術が可能となり、術後の日常生活機能も改善しています。


 データから考えると、腕や足、胸や背中の膨らみ、腫れ、しこりが骨軟部腫瘍である可能性はそれほど高くないです。また、もし骨軟部腫瘍であっても、良性であれば命にかかわるようなことはほとんどありません。心配しすぎる必要はないです。ただ、通常のけがや障害の経過と異なるケースでは、腫瘍性疾患の場合もあることを知っておいてください。原因が分からないしこりやこぶが徐々に大きくなっているようなら要注意です。一般的に5cmを超えると悪性の可能性が高くなります。痛みがないからと見過ごすことはできません。すぐにかかりつけの整形外科でMRIなど精密検査を受けてください。治療は早く始めるほど効果が高いです。



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