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股関節の健康を守り、健康寿命を延ばす



 股関節がどこにあるのか、知っていますか?


 股(また)という言葉から、いわゆる股間のあたりを連想する人が多いようです。実際にはもう少し奥のお尻に近いあたりで、太ももの骨が骨盤と接する部分の関節が、股関節です。股関節は、脚の付け根にあるボール状の骨(大腿骨)と、骨盤のくぼみ(臼蓋)が接している部分のことで、その周りにある多くの筋肉や靭帯で支えられています。

 

 股関節は胴体と2本の脚(下肢)をつなぎ、日常的な動きの要となっています。歩いたり立ったりするだけで大きな負担がかかるため、どの関節よりも酷使され、痛みやすい関節でもあります。普段はあまり意識することはないと思いますが、普通に歩くだけでも股関節には体重の3〜4.5倍の負荷がかかっています。階段の上り下りでかかる負荷は体重の6〜8倍にもなります。また、荷物を持つと、たとえ1、2キロのものであっても、その数倍の負担が股関節にかかります。普段からこれほど大きな負荷を受けているため、身体の老いの兆候が最初に現れる部位になりやすいのです。


 股関節の不調の初期は、歩き始めや立ち上がりなど「動作のはじめ」に違和感を覚えることが多くみられます。症状が進行すると、日常の動作や歩く間も痛みを感じ、ひどくなると安静にしていても痛むようになります。さらに放置していると、歩くことはおろか、座ったり寝たりすることすら難しくなり、身体を動かすことそのものが辛くなってしまいます。

 股関節に障害が起こると、お尻や太もも、腰のあたりに痛みが生じやすくなります。また、歩き方にも影響が出て、ひざにも負担がかかります。坐骨神経痛や腰痛、あるいはひざ痛などと間違えやすいのですが、実はおおもとの原因が股関節にあることも少なくありません。


 日常生活を送る中で股関節に負担・負荷が蓄積されるのは、ある程度は仕方のないことです。しかし、蓄積された股関節の負荷が痛みや病気として現れないよう、少しでも股関節に負担がかからないように生活習慣を見直したり、適切なセルフケアで股関節を守ることは、元気に自立していきいきとした生活を送ることができる「健康寿命」を延ばすための秘訣になります。


 まずは、股関節に不調があるか、症状がない(軽い)うちになるべく早く自身の変化に気付くことが大切です。右と左を比べ、最近、片方の脚の動きが悪くなってきたなと思ったら要注意です。また、自分では違和感なく歩いているつもりでも周りから「歩き方がおかしい」とか「足を引きずっている」といわれたら、無意識に股関節をかばって歩くようになっているのかもしれません。


 股関節のトラブルをいち早く発見できるセルフチェックの方法を二つ紹介します。

もし次のようなサインがみられたら注意しましょう。


・歩いていると肩が左右に揺れる

・あぐらをかきにくくなった

・足の爪を切る姿勢が辛くなった

・立ったままズボンや靴下を履くのがしんどい

・ひざや腰などに痛みがあって治療しているがなかなか治らない


 当てはまるものが多い人ほど、今は痛みや違和感がなくても、股関節に負担・負荷が蓄積されていると考えられます。


 もう一つは、片脚立ちの姿を正面から鏡に映してみましょう。左右両方の足で行ってください。この時、どちらかの肩が下がっていれば、股関節にトラブルのある可能性があります。また、家族など自分以外の人に後ろから見てもらい、脚を上げている側のお尻だけが下がっている場合も、股関節のトラブルが考えられます。


 セルフチェックで気になる点や違和感、トラブルの疑いがあれば、面倒がらずに一度整形外科で自身の股関節の状態を診察してもらうことをお勧めします。問診や画像検査などで股関節の状態はすぐに分かります。もし病気になっていても早期であれば治療の選択肢が広がり、患者さんの体への負担が少ない治療法を選べますし、悪くなっていなかったら患者さんがこれから先も股関節の病気にならないよう、医師の立場からできる限りの働きかけをします。治療も予防も“早すぎる”ことはありません。


 将来的に股関節を健康に保ちたいと思っているなら、まず食生活に注意して体重をコントロールすることが重要です。股関節は起立時の上半身の重さを支える関節ですから、太れば太るほど股関節への負担は増えていきます。


 適正な体重がどれくらいかは、よく知られているBMIを目安にするといいでしょう。BMIの計算式は<体重(kg)➗[身長(m)✖️身長(m)]>で、計算結果が18.5以上、25未満が標準体重で、25以上の場合に肥満と判断されます。この数値で肥満と判断されるようであれば、25未満の標準体重の数値におさまるようダイエットに取り組むよう指導しています。


 股関節の衰えや障害を予防するには、日ごろから適度な運動をして、股関節周辺を柔軟にし、筋肉を鍛えておくことが大切です。運動の基本は、ウオーキングとストレッチ、筋肉トレーニングの3つです。


 3月号では、関節に負担をかけないウオーキングのやり方と、自宅で簡単にできるストレッチと筋トレを紹介する予定です。

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