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成長期のスポーツ障害を防ぐために… 軽いケガでも油断せずに、専門医の判断を仰ぐのが大切



  新型コロナウイルスとの闘いはまだ続いていますが、道内の多くの小中高校が6月から授業を再開し、活動休止を余儀なくされた運動部の部活動やクラブチームの練習も再スタートを切りました。残念ながら、全道・全国などの大きな大会は中止になりましたが、選手の皆さんはそれぞれの次の目標に走り出し、この夏も熱の入った練習に励んでいると想像します。

 運動やスポーツ競技は心身の発達を促す一方、やり過ぎや使い過ぎによる故障「スポーツ障害」は、大人になってからの体に影響を残すことがあります。以前、スポーツドクターに関するコラムでも取り上げた「スポーツ障害」ですが、今回はもう少し深く掘り下げて、「成長期のスポーツ障害を防ぐ」というテーマでお話します。

 野球やサッカー、バスケなど、小学生の頃からスポーツに打ち込む子どもが増え、スポーツ障害が目立っています。スポーツ障害とは、一言でいうと「スポーツに関係して起こる運動器のトラブルのことです。転倒や衝突などの大きな外力がかかって起こるねんざや打撲、習慣的に運動を繰り返すことやトレーニング過多により起きる痛みなどがありますが、いわゆる野球肘、テニス肘、膝まわりの故障、疲労骨折など定番化しています。

 年代別のスポーツ障害の発生件数は10代が最も多く、ピークは17歳前後の高校生、続いて中学生、小学校高学年、大学生の順になります。スポーツ障害は、小学校高学年から高校にかけての成長期に集中して起こっています。

成長期のスポーツ障害の代表例

【肩関節】

リトルリーグ肩(上腕骨近位端骨端線離開)

・強くねじることで肩のつけ根の軟骨部分がはがれる

・肩の動きが制限される

・テニスやバレーなど腕を振る動作をする種目でも起きやすい

【肘関節】

野球肘

・肘関節の使い過ぎが原因。投手に多い

・肘の内側は、靱帯に引っ張られることで成長軟骨がいたみます

・肘の外側は、骨同士がぶつかることで変形する(離断性骨軟骨炎)

【腰】

腰椎分離症(腰椎疲労骨折)

・腰を後方にそらすと痛い(ほとんどが第5腰椎)

・腰をひねったり、体を後ろにそらす動作の繰り返しが原因

【膝関節】

オスグット症・ジャンパー膝

・蹴る、跳ねる動作で発症(サッカー、陸上、バスケ、バレーなど)

・膝蓋骨靱帯付着部・膝蓋腱が痛む

・筋肉に骨が引っ張られ、骨がはがれることも稀にあり

【足関節】

前距腓靭帯損傷(通称:ねんざ)

・スポーツによる外傷としては最も頻度が高い

・外くるぶし付近の靭帯の損傷のこと

・繰り返すと慢性化し、後遺症を残すケースも

【足部】

踵骨骨端症(Sever病)

・踵の後方に疼痛がおこる

・片側例が多いが両側例もあり。男児に多い。

 大人に比べて、子どもの体は①骨が弱い ②筋力が弱い ③関節がやわらかい、などの特徴があります。このため、運動によって大きな負担がかかると、骨や関節に障害を起こしやすいのです。また、身長が大きく伸びる時期はケガをしやすくなります。個人差はありますが、平均的なピークは男子が13歳、女子が11歳。骨と筋肉の成長速度はアンバランスで、骨よりも筋肉の方が遅れて成長するため、筋肉の柔軟性が低下するのです。

 子どもたちが自らスポーツ障害を予防するのは難しいので、保護者や指導者が、特定のスポーツにより起こりやすい疾患について知識を持ち、発生や再発を防ぐことがとても重要です。スポーツをしていれば、いつかはケガをすることもあります。どれだけ注意していても故障は起こります。大切なのは、ケガや故障をした時に、そのケガや故障とどう向き合っていくかです。周囲がすぐにストップをかけるほどの大きなケガでなければ、「ちょっと転んだだけだから、放って置いても大丈夫だろう」「そんなに痛くないから、2、3日すれば治るはず」「スポーツに多少のケガや故障はつきもの。いちいち病院に行っていたらキリがない」と、医療機関を受診せず(受診を勧めず)、そのまま様子をみるという人(本人、保護者、指導者)も多いでしょう。

 もちろん、障害(ケガや故障)の程度が軽く、運よくそれで自然に治癒・改善するケースもあります。ただ、知っていただきたいのは、体に何もなければ小さな痛みも違和感も生じません。出血や腫れ、皮膚の変色などがなくても、何らかの原因で筋肉や骨、神経などが刺激されているから痛みや違和感を感じているのです。特に、体に過度の負担がかかることで慢性の痛みが発生するような場合、最初はほとんど痛みなどの自覚症状はなく、ちょっとした違和感だけがあるというケースが多いです。それを放置することで重症化し、痛みが強くなってきたので受診したところ、すでに関節の変形や骨の分離が起こっていて、完全には治らない、そんな残念な結果になってしまうことも、実際の診療現場ではそう珍しいことではありません。

 足をひねったとか、突き指したとか、原因が明白な外傷であっても、体の中で何が起こっているかは、レントゲンなどの画像検査をしてみないと正確には分かりません。軽いねんざだと思っていたら、実際は骨が欠けていたりすることもあります。

 どうか自己判断で「軽い」「平気」と決めつけてしまわずに、念のため、専門医・スポーツドクターを受診し(受診させ)、検査を受け(させ)てください。たとえ、診察の結果、深刻なケガに発展するリスクのない小さな障害であったとしても、それはそれで安心して競技に集中できるようになるので、決してムダではありません。

 スポーツに燃える子どもは、頑張り過ぎて無理をしがちです。そして、勝利や優勝を目指し、高い目標に向かって頑張る子どもは、痛くても休みたくても指導者や保護者にはなかなか言い出せません。大人がしっかり見ていてあげないといけません。子どもの症状を見逃さないでください。ケガや故障をして、練習や試合に出られなくなると、早く競技復帰したい気持ちが強まり、焦りが生じることも多いはずです。治療中、痛みなどの症状が軽くなり、少し我慢すればプレーができる状態になると、子どもたちはすぐにでも競技に復帰しようと考えます。気持ちは痛いほど分かりますが、ケガの完治を待たずに練習や試合に復帰しても、十分なパフォーマンスを発揮するのは難しいです。無理を押してプレーを続ければ、せっかく治りつつあったケガや故障は悪化しますし、ケガをかばうことで、別の部位を痛めてしまうおそれもあります。早期に競技復帰したいなら治療中の焦りは禁物です。

 さらに重要なのは、ケガや故障から回復した後、再発の防止と(別の)ケガや故障をしないための取り組みをすることです。完全に回復したとしても、そもそもの原因を取り除かなければ、また同じ部位を痛める可能性が高くなります。スポーツ障害の原因として、身体の状態やフォーム、練習方法、練習後のケアなどに問題があることが考えられます。それらを一つずつ解決していくことがカギになります。年代や体力にあったトレーニングの指導、ウォーミングアップやクーリングダウンの指導、それぞれの競技の正しいフォーム(体の使い方)やスキルを身に付けるためのアドバイス、食事や睡眠、休息の取り方などの指導など、一人ひとりに合った運動メニューやケア方法を提示し、ケガや故障の予防とプレーのパフォーマンス向上のための指導・アドバイスを行うのも、私たち整形外科医・スポーツドクターの役割です。

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