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「半月板損傷」の多くは、保存療法で症状改善します



 半月板損傷の解説は、前号でしましたので、今回は治療法についてお話しさせていただきます。半月板損傷治療には、保存療法と手術療法の2つがあります。


 保存療法は、半月板損傷の程度が比較的程度で、ロッキングの症状がない場合、また、加齢変化による損傷の場合、患者さんが手術を希望しない場合などに選択される治療です。

 

 手術などの外科的方法によらずに症状改善を目指します。ヒアルロン酸の関節内注射や抗炎症薬の服用などで痛みを軽減しながら、大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)の強化などリハビリ・運動療法を併用すると症状が改善する人も少なくありません。肥満の人は減量も効果的です。


また、サポーターを使って膝関節を安定させたり、O脚が原因で膝の内側に体重が偏る人には足底板(インソール)などの装具を使って偏りを減らしたりする方法も有効です。

 

 特に重要なのがリハビリ・運動療法で、筋力を高めて膝を安定させるだけでなく、最近の研究からは軟骨組織の細胞の炎症を和らげたり、関節内や周囲に炎症を抑える物質を生み出す効果があることも明らかになっています。当院では、膝まわりの筋肉運動や膝の動きを硬くしないために行う可動域訓練を自宅でも継続して行えるよう、リハビリを担当する理学療法士の指導を受けてもらっています。

 

 診療で長年半月板損傷の患者さんを診てきた実感として、約7〜8割のケースは保存療法と運動の習慣化など日常生活の注意・見直しによって症状改善につながっています。


 半月板損傷の程度が重度の場合、また、若年層のスポーツ活動で起こった損傷で、早期の復帰を望んでいる場合、保存療法では改善せず、痛みなどで日常生活に支障を来している場合は手術療法を検討します。


 手術には主に損傷した部分を切り取る「切除術」と、縫い合わせる「縫合術」の2種類があります。手術では内視鏡を用い、切除術か縫合術かを選択しますが、近年は半月板を温存することを重視した縫合術が主流となっています。


 中高年で変形性膝関節症を伴う場合は、すねの骨を切ってO脚を矯正する骨切り術や、変形して傷んだ関節の骨の表面を取り除き、金属とポリエチレンでできた人工関節に置き換える人工関節置換術もいっしょに行う必要のあるケースもあります。


 繰り返しになりますが、半月板損傷の多くは保存療法で症状が改善します。安全性や痛みなどへの不安から手術に抵抗がある人は多いと思いますが、早期に受診して病気をこじらせる前に手を打てば、手術を行わない保存療法で対応できるケースの方が多いです。


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 半月板損傷が大きな要因となる変形性膝関節症と診断された人は、そうでない人に比べ、要介護になるリスクが約6倍高くなることが厚労省の研究で分かっています。


 変形性膝関節症にかかるリスクを減らすためにも、スポーツなどで半月板を痛めた時は放置したり自己流の対処でやり過ごしたりせず、かかりつけ整形外科医で正しい診断と治療を受けて完治させること。それが将来の膝の健康を守り、いつまでも自分の脚で元気に歩き、健康寿命を延ばすことにつながります。


※ 最後に、子どもに多くみられる少し特殊な半月板損傷についても触れておきます。

 

 通常、三日月型をしている半月板が生まれつき、半月または円板の形をしている場合があり、これを「円板状半月板」といいます。円板状半月板はほとんどの場合、両膝の外側の半月板に発生します。欧米ではまれですが、日本人では比較的多く20〜30人に1人いるとされます。病気ではなく、その人の体の特徴と考えられており、生涯を終えるまで特に症状が出ない人もいます。

 

 MRI検査などで偶然発見された場合も、無症状であればすぐ治療する必要はないのですが、この円板状半月は子どもの半月板損傷の原因となります。正常の半月板に比べてサイズが大きいため負荷がかかりやすく、半月板そのものの強度も弱いため、小さな力でも損傷してしまうことがあり、子どもが幼稚園や保育園、小学校で「長く歩く」「走る」など、ちょっとした活動をした後で膝の痛みを訴える場合、円板状半月板であることが損傷の原因になっているケースが少なくありません。


 治療は、鎮痛剤やサポーターなどで痛みを軽減させる保存療法を試みます(関節に水のたまる方はスポーツ活動を少し制限することもあります)。それでも症状が続く場合は手術が必要になります。

 

 お子さんがちょっとした運動や日常生活で膝の痛みを訴える場合は要注意です。一度、整形外科で相談することをお勧めします。

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