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 今回のテーマは、脊柱側弯(そくわん)症です。“脊柱”を省略して、側弯症と呼ばれることもあります。


 正面から見て、背骨が左または右に曲がる(弯曲する)病気です。本来、背骨は前から見ると真っ直ぐですが、横から見るとゆるやかなS字型をしていて、バランスをとって体を支えています。その形が崩れてしまうことを“脊柱変形”といい、そのうちねじれを伴って横に曲がってしまうものを側弯症といいます。


 側弯症にはいろいろなタイプがありますが、原因がはっきり分かっていない「特発性」が全体の約80%を占めています。


 側弯症はあまり聞き慣れない病名かもしれませんが、日本では軽度まで含めると子どもの100人に1〜2人にみられ、決して珍しい病気ではありません。特に小学校高学年から中学生に多く、なかでも13〜14歳の女子での発症率が2.5%と、思春期の女子に好発します(女子は男子に比べ約7倍発症しやすいとされます)


 放置しても背骨の痛みなどはほとんどないのですが、まれに凝りや疲れやすさを訴えたりするお子さんもいます。一般的には成長の終了とともに変形も止まりますが、弯曲の程度(角度)が大きい場合などは、成長が止まっても徐々に変形が進んでしまいます。その場合、そのまま放置していると、外見からも姿勢のゆがみが分かるようになったり、曲がった背骨が内臓を圧迫して、心臓や呼吸器、消化器の機能低下を招いたりする恐れがあります。歩きにくい、歩くと疲れやすいなど日常生活で不便を感じることがあるうえ、重篤な呼吸機能の障害や心不全にいたるケースもあります。そうならないように、早期に弯曲を発見し、その程度が治療の必要なものかどうかを慎重に判断し、必要であれば適切な治療を施し進行を抑えることが必要なのです。


 1979年から、小中高での側弯症検診が義務化されています。また、2016年から学校健康診断での「運動器検診」が義務化され、側弯症の検査も項目に入っています。学校健康診断で背骨の異常が発見され、早期診断・治療につながるケースももちろんあるのですが、一方で、学校医は内科や小児科の先生が担当されることがほとんどで、整形外科的な診断にはばらつきがあり、残念ながら初期症状を見逃す事例も起きています。また、せっかく学校医により早期発見されても軽度の場合は放置されて、ひどい状態になってから病院へ来られるケースもあります。


 まだ、小さなお子さんの場合は、親御さんが一緒にお風呂に入っているときに「ちょっと、おかしいな…」とお気付きになる場合も多いのですが、患者の大半が思春期の女子だけにそうはいかないと思いますので、普段からお子さんの体の変化に気を付ける必要があります。ポイントは次の4つ。①肩の高さが左右で違わないか、②左右どちらかの肩甲骨が飛び出していないか、③ウエストのくびれが左右で非対称ではないか、④前かがみになったとき、左右どちらかの背中や腰が反対側より高くないか(背中に徐骨の隆起がないか)、を観察・チェックするようにしてください。おかしな点があれば、側弯症の疑いがあります。放置しないで、すぐに整形外科を受診してください。


 整体やマッサージ、カイロプラクティックなどで側弯症が治療できるとする民間療法には注意が必要です。誤った情報を載せたサイトも多く、それらを信じてしまう親御さんもいらっしゃいます。


 確実にいえることは、現時点で整体やマッサージ、カイロプラクティックなどの民間療法が側弯症に効果があるという医学的な根拠はないということです。反対に、民間療法を続けるうちに症状が悪化する例は後を絶ちません。取り返しがつかないほど重症化してしまったケースも報告されています。側弯症が疑わしい場合は、まず専門科である整形外科を受診するようにしてください。


 治療は重症度によって異なります。一般的には、変形(湾曲)の角度を示す「コブ角」が治療方針を決める重要な判断材料となります。


 コブ角が25~30度未満(軽度)の場合は、外見上も大きな変形はなく、骨成熟度により経過観察が選択されます。3カ月〜半年または1年に一度のペースで整形外科を受診してもらい、病状が進行していないかどうかを確認するため、確認姿勢のチェックやレントゲン検査などを行います。コブ角が25~30度以上(中等度)まで進行してしまった場合は、コルセットなどを装着する装具療法が行われます。変形をそれ以上進行させないことが目的で、基本的には入浴時以外ずっとコルセットを装着します。骨の成長が完全に止まる18〜19歳ごろまで装着を続けます。装具療法でも、病状の進行具合や装着状況を確認するため3カ月〜半年に一度の定期検診が必要です。コブ角が45~50度以上(重度)まで進行している場合は、手術の適応となります。背骨のどの部分が曲がっているかによって手術するべき時期が変わってくるなどひとくくりにはできませんが、背骨の両側にフックやネジを固定して、ロッドという棒状の器具を使って脊柱を真っ直ぐの状態に矯正します。難易度の高い手術とされますが、近年は新しい術式の登場や医療技術・機器(装置)の進歩によりかなり安全に行えるようになっています。


 特発性側弯症は、発症原因が不明のため予防法は今のところ確立されていません。このため、早期に発見し、この病気であることを見極め、いち早く治療に入って変形を小さく抑えていくことが何よりも大切です。重篤になるケースや手術にいたるケースを減らす、その前段階で食い止めるための早期発見・診断・治療です。


 軽度のうちに見つかれば、基本的には経過観察だけで済みますので、特に制限はありません。ほかのお子さんと同じように生活してもらって構いません。確率的にも100人いたら1〜2人はごく軽度の側弯症なわけですし、過度に恐れる必要はありません。それ以上、変形が進まないよう、われわれ整形外科医があらゆる手を尽くしていきます。


 新型コロナウイルスの影響で受診控えが問題となっていますが、整形外科領域でも悪化してから受診する患者さんが増えています。病院は感染対策を徹底しているので、ご自身の体調が悪かったり、お子さんなど周囲の方の様子に異変を感じたりしたら、すぐに病院を受診してください。感染リスクよりも、病気の発見や治療が遅れる不利益の方がずっと大きいです。


 最後に、繰り返しになりますが、側弯症は検診がある小中学校でも見逃すリスクが残ります。知らずに放置すると、症状が深刻になるまで気付かないこともあります。大切なのは、普段から親御さんがお子さんの体の変化に気を付けること。そして、「何か変だな」と感じたら、すぐに病院で相談してみること。その時は、整体やマッサージ、カイロプラクティックなどの民間療法を頼らず、専門科である整形外科を受診してください

 近年、スマートフォンの普及に伴って姿勢が悪い人が若い世代を中心に増加しています。 スマートフォンを使用する際に顎を引いて下を向く姿勢になりますが、その際に本来は頭を支えるためにカーブしている首の骨がまっすぐになります。まっすぐになると、頭の重さが首にかかる負担が大きくなるのです。この状態が長時間に及ぶと、通常時でも首がまっすぐなストレートネックになります。


 このストレートネックはスマホ首とも呼ばれ、現代病の一種とされるほど身近なものなのです。それでは、このストレートネックが引き起こす症状と検査方法についてわかりやすく説明していきます。


■ストレートネックの症状

・首こり・肩こり

 頭の重さが首に大きな負担をかけるため、首まわりの筋肉に影響して首こり・肩こりとして感じる可能性があります。 ・手や腕のしびれ・頭痛・目まい

 首に負担がかかり悪化することで、頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアにより神経を圧迫してしまい、手や腕のしびれ・目まいなどの症状を引き起こすこともあります。首の骨は頚椎と呼ばれ7個あるのですが、神経が圧迫される部位によって神経症状は異なります。頚椎の上の方であれば目まいや頭痛などが、下の方であれば手・腕のしびれを引き起こします。


■検査方法

 まずはストレートネックの確認をするため、レントゲンを撮影します。その後、必要であればどの位置の神経が圧迫されているかを確認するためにMRIを撮影する場合もあります。


 下の画像をご覧いただくと、ストレートネックが悪化して併発した頚椎椎間板ヘルニアにより、神経が圧迫されているのが確認できます。この症例では、頚椎の5番と6番の間の神経が圧迫されているため、首や肩の痛みに加えて手・腕のしびれが起きている可能性が高いです。


 現代病と言われているだけあり、近年ストレートネックによる症状に悩まれている方が増えています。当院ではオープン型MRIを導入しており、多少お待ち頂ければ当日撮影が可能な場合も多いです。上記のような症状にお悩みの方はご来院ください。






 

 日常生活や趣味、運動をしていて『肩の調子が悪いな』『なんとなく動かしにくいな』と感じることはありませんか?


 『肩が痛いけど病院に行くほどではないな。』『肩が少し気になるけど湿布貼っておけばそのうち治るだろう。』そう考えている方は多くいらっしゃると思います。しかし、それは肩関節周囲炎や石灰性腱炎、腱板損傷かもしれません。


 肩関節は人体の中で最も可動域(動く範囲)が広い関節です。関節の可動域が広いということは同時に関節が不安定になりやすいことを意味しています。そのため肩関節の周囲は多くの筋肉が関節を囲むように存在して関節を動かし、安定させる役割をしています。また、肩甲骨とは密接な関係にあり連動して動作(肩甲上腕リズム)を行います。


 肩関節の広い可動域を可能とするために構造上、肩峰(鎖骨と肩甲棘で構成)と上腕骨頭という骨の隙間を走行する筋腱(棘上筋腱)も存在しています。


 私たちが生活する上で手を使わずに生活することは困難なことです。その手をより自由に便利にしてくれているのが肩関節という可動域の広い関節なのです。しかし、広い可動域の一方で構造上知らず知らずのうちに筋腱が傷つき痛めてしまう危険性も含んでいます。


では、筋腱を傷つけてしまう原因とは何でしょうか?


 関節の構造上の問題点や加齢による筋腱の弱化も原因の一つには違いありませんが、実は普段の姿勢や誤った使い方が原因になる可能性もあるのです。


 前述したように肩関節は肩甲骨の動きも重要になります。しかし、胸椎の後弯が増大(猫背と呼ばれる状態)すると肩甲骨が外側に引っ張られ正常な位置にない状態になります。また、肩関節が前方突出となりこれも正常な位置とは言えません。この状態で肩関節の屈曲・外転など動作をすると筋腱への負担が増大します。また、代償動作を使用することで一部の筋肉を過度に使用するオーバーユースが発生してしまいます。関節の構造上で肩甲骨が上手く動かせないと骨と骨に筋腱が挟まるインピンジメントが発生する可能性もあります。


 このように普段の姿勢やそれが原因で起こる間違った使い方が長い間続くことで筋腱を傷つけ、炎症を起こして肩を痛める要因となることがあるのです。この様な場合の多くで、肩甲骨や肩関節周囲の筋力が低下する、柔軟性が低下するなどの状態がみられます。そのため、日常的にストレッチや運動を行うことで柔軟性や筋力を向上して姿勢に気を配り改善していくことが大切になります。


 肩が痛いという症状でも様々な疾患があります。先に記述したように肩関節周囲炎(四十肩・五十肩と呼ばれる)や腱板損傷、腱板断裂、石灰性腱炎などの疾患があり、それぞれに治療方法や治療のプロセスが違います。まずは医師の診察を受け、ご自身の肩の状態がどうなっているのか診断してもらう事が大切です。


 当院では疾患や症状によって関節注射や薬物療法、物理療法や運動療法など患者様一人ひとりの状態に合わせた治療を選択・実施しております。


 リハビリテーションでは患者様に分かり易いパンフレットを用意し、日常生活での注意点や少しでも痛みを楽にできるような姿勢と動作、お家で出来る運動を紹介しています。また、超音波治療器や運動療法、ストレッチを用いて少しでも患者様の症状を改善できるようお手伝いさせていただきます。


 はじめは症状も軽く病院へ行かなくても大丈夫と思っていても、症状が長引く、悪化していく場合も多々あります。まずは整形外科に行き、医師に相談してみてはいかがでしょうか。



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