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 皆様は、保険診療での医療費の流れについてご存じでしょうか。


 被保険者(患者様)や、その家族が保険医療機関で治療を受けると、保険医療機関はレセプト(診療報酬明細書)を作成し、 「診療報酬」として自己負担額を除く医療費を、審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会)へ1ヶ月単位で請求しています。


 診療報酬とは、保険医が保険医療機関において、患者様に対して保険医療を提供した場合に、その行為に対して支払われる報酬のことであり、診療報酬点数表より全国一律で1点につき10円で計算しています。簡単に言えば、医療技術・サービスの値段です。


 診療報酬の額、および薬価基準の算定方法などは、厚生労働省保険局医療課が所管する中央社会保険医療協議会(中医協)で審議されています。療養に要する費用の算定方法は、この中医協の審議を経て、厚生労働大臣が告示する「診療報酬点数表」で決定されています。

また、原則として2年ごと4月に診療報酬改定が行われております。


 今年2020年4月に診療報酬改定がされます。今回の診療報酬改定によって、改定率は医科では0.53%、調剤は0.16%引き上げとなりました。また、薬価は-0.99%のマイナス改定でした。診療報酬の改定率とは病院医療費が上がるのか下がるのかパーセンテージで表していて、国の予算を決める指標となっています。つまり、改定率が上がると医療費も高くなり、反対に改定率が下がると医療費は安くなることを意味しています。


 では、「この診療報酬をどのくらい負担するか」ということが重要ですよね。

窓口での自己負担額は年齢によって下記のように異なります。

①70歳未満の方は3割。6歳(義務教育就学前)未満の方2割。

②70歳から74歳の方は2割。(現役並み所得者の方3割)

③75歳以上の方は1割。(現役並み所得者の方3割)


 例えば初診の場合、初診料は288点(2018-2019年)なので1点10円より、診療報酬は2,880円となります。

したがって自己負担額は、

①70歳未満の方は2,880×0.3=864

患者様に負担していただく額は、一の位を四捨五入するので860円

6歳(義務教育就学前)未満の方は2,880×0.2≒580円

②70歳から74歳の方は2,880×0.2≒580円

③75歳以上の方は2,880×0.1≒290円 となります。


 診療報酬は原則、各診療行為の点数を合算した出来高払いとなっていますので、実際には初診料や再診料に加えて検査料なども関わってきます。


 医療費の詳細については、会計時にお渡しする領収書と明細書で確認していただくことができます。ご不明な点がございましたら、お気軽に事務までお問い合わせください。 






 

 



 近年、肩の痛みや肩こり、腰痛などの治療法として注目されているのが、「ハイドロ(筋膜)リリース」です。


 ハイドロリリースがどんな治療法なのかを説明する前に、「トリガーポイント」という用語についてお話します。トリガーとは「引き金」という意味で、トリガーポイントは痛みを起こす引き金となるポイントのことです。


 トリガーポイントは、長い時間、同じ姿勢でいる習慣を持つ人に多く見られます。長い時間同じ姿勢でいると、筋肉が緊張し収縮した状態になります。筋肉が収縮すると毛細血管が圧迫されて血行が悪くなり、神経や筋肉へ運ばれる栄養素や酸素が減少します。さらに老廃物の蓄積や筋肉の酷使、損傷が重なると、神経が異常に興奮した状態となり、炎症物質が放出されます。これがトリガーポイントのできた状態です。


 肩や腕、腰などに慢性的な痛みがある場合、押すと痛みが広がる<硬いしこり>のようなものがあります。これがトリガーポイントです。これまでの研究から、トリガーポイントは筋肉などを包む「筋膜」という白い膜が厚くなっている部分に多く存在していることが分かってきました。また筋肉のこりや、運動後の筋肉の痛みの多くは、筋膜が関係していることも明らかになってきました。


 筋膜は、筋肉だけでなく、骨や臓器、神経、血管など体中のあらゆる構成要素を傷付けないよう包み込みながらつながり、それらの位置を保つ働きをしています。何層もの膜で構成される筋膜がスムーズに動くことで、筋肉や関節がうまく動きますが、同じ姿勢を続けたり、筋肉を酷使したり、あるいはストレスなどで緊張した状態が続いたりすると、筋膜同士や筋膜と筋肉、筋膜と他の組織が癒着して、硬直し、<こり>のような状態になります。筋肉を動かせる範囲が狭くなり、癒着部分が炎症などを起こし、トリガーポイントとなって痛みを引き起こします。


 そこで、筋膜の癒着をリリース(はがすこと)して元の状態に戻すことで、スムーズに動かせるようにするのがハイドロリリースという治療法です。


 具体的には、超音波診断装置(エコー)で患部を確認しながら、癒着部分に生理食塩水などを注射器で注入して筋膜をはがします。分かりやすく例えると、ラップが何枚も重なっているような状態なので、間に水を注入して1枚ずつはがすようなイメージです。痛みはほとんどなく、治療にかかる時間は、外来診療で、数分で終わります。


 近年、エコーの解像度がとても良くなり、筋膜が厚く重なっている部分がはっきりと白い層として映るようになりました。トリガーポイントのある場所、筋膜の癒着している部分に確実に薬液を注入することができ、痛みも速やかに解消することが期待できます。


 また、注射の時に血管や神経を傷付ける心配もありません。被ばくもなく、患者さんの負担の少ない低侵襲な治療といえます。数年来、激しい肩の痛みや腰痛に悩まされていた患者さんが、月に1、2回程度、ハイドロリリースを受けたところ、ほとんど痛みを感じなくなり、正常の生活が送れるようになって、旅行やスポーツもできるようになったという喜びの声も多く聞かれます。


 ハイドロリリースと並行して、リハビリを行うことで、筋肉などの動きをスムーズにしてバランスを整え、より治療効果を上げることが望めます。ハイドロリリースで最初の痛みが取れても、同じような姿勢や生活習慣を続けていると、また痛みが生じる場合もあるので、リハビリを併用することも重要です。


 ハイドロリリースの対象となるのは肩の痛みや肩こり、腰痛ですが、ほかに肘関節痛や膝関節痛、頸部痛、手のしびれなどにも応用されています。この治療法が有効なのは、筋膜にトリガーポイントがあることが原因のものです。もし、まったく効果がない場合は、痛みの原因がトリガーポイント以外にあることが考えられます。


 新しい治療法なので、まだ解明しなければならない点もありますが、整形外科領域のさまざまな痛みの治療に応用できるため、今後さらに広がっていく可能性があります。


 ハイドロリリースは、当院でも昨年4月より症例を限定して施行しており良好な成績を収めております。どの医療機関、整形外科でも受けられる治療ではありませんが、ブロック注射などと同様に、保険適用の治療ですので、安心して受けていただけます。


 画像診断をしても原因のはっきりしない肩や腰の痛み、筋肉や骨格系の痛みや、何らかの治療を受けているのに慢性的な痛みが取れず、悩んでいる方がいらしたら、ぜひ一度、諦めずに相談に来ていただきたいです。




 
  • 2020年2月20日

 

  一般的に温めると聞くと入浴やカイロなどが浮かびます。医療現場で行われる温熱療法には、「ホットパック」「マイクロ波」「赤外線」「超短波」などがあり、多くの病院や治療院で使用されています。当院のリハビリテーションでも温熱療法を用いることがあります。主な目的としては、疼痛緩和・軟組織柔軟性向上・血行の改善・代謝亢進・浮腫軽減・リラックス効果などがあります。


 今回は、リハビリテーションで用いる「ホットパック」についてお話したいと思います。


 ホットパックは、温熱療法の一種でパック状のゲル物質や熱線が入った物の総称です。

温熱療法は、痛みの原因となる患部を温めて血行を良くすることで、筋肉の緊張を緩和する効果があります。慢性的な腰痛や肩コリに効果的です。表在温熱として用いられていますが、小平らによると、深部の血流量の増加も認められたと報告があり、表面だけではなく深部の組織の温熱効果も期待できます。(小平智之 他;ホットパック療法による筋硬度、血流量に対する効果の検討―準ランダム化比較対象試験による検討―理学療法学術大会2012)


 理学療法診療ガイドラインによると、背部痛や変形性関節症などの疾患の方に温熱療法を行った際に、症状の緩和などの効果があったとの報告があります(理学療法診療ガイドライン 背部痛・変形性膝関節症)。また、向中野らによると、温熱療法を行いながらのストレッチを同時に行なうことで、ストレッチの効果が高まったとあります。(向中野直哉 他:ホットパックとストレッチングの同時実施の介入効果に関する検討;理学療法学Supplement2016(0),0499,2017 公益社団法人 日本理学療法士協会)


 温熱療法は、病院で痛みの改善などの目的で用いられていますが、自宅でもセルフケアとして行うことができます。


①蒸しタオル…水で濡らしたタオルを軽く絞り電子レンジ500Wで約1分加熱すると蒸しタオルの完成です。タオルのままだとすぐに冷めてしまうので、ジップロックなどに入れて熱が逃げないようにしてください。火傷の危険性があるためタオルで巻いて患部に当てることをおすすめします。使用する時間は15~20分程度が目安です。


②入浴…入浴すると全身の血行が良くなるため、全身のコリの改善や疲労回復につながり、リラックス効果もあります。ぬるめのお湯(38~40℃)でみぞおちくらいまでの深さにしましょう。深く浸かってしまうと水圧の作用により心臓への負担が大きくなってしまいます。


以下のような方はお気をつけください

痛みの強い急性期、悪性腫瘍、血圧異常、心疾患、皮膚疾患部位、重篤な循環器の障害、妊娠中、感覚障害、出血傾向のある部位




 
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