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  一般的に温めると聞くと入浴やカイロなどが浮かびます。医療現場で行われる温熱療法には、「ホットパック」「マイクロ波」「赤外線」「超短波」などがあり、多くの病院や治療院で使用されています。当院のリハビリテーションでも温熱療法を用いることがあります。主な目的としては、疼痛緩和・軟組織柔軟性向上・血行の改善・代謝亢進・浮腫軽減・リラックス効果などがあります。


 今回は、リハビリテーションで用いる「ホットパック」についてお話したいと思います。


 ホットパックは、温熱療法の一種でパック状のゲル物質や熱線が入った物の総称です。

温熱療法は、痛みの原因となる患部を温めて血行を良くすることで、筋肉の緊張を緩和する効果があります。慢性的な腰痛や肩コリに効果的です。表在温熱として用いられていますが、小平らによると、深部の血流量の増加も認められたと報告があり、表面だけではなく深部の組織の温熱効果も期待できます。(小平智之 他;ホットパック療法による筋硬度、血流量に対する効果の検討―準ランダム化比較対象試験による検討―理学療法学術大会2012)


 理学療法診療ガイドラインによると、背部痛や変形性関節症などの疾患の方に温熱療法を行った際に、症状の緩和などの効果があったとの報告があります(理学療法診療ガイドライン 背部痛・変形性膝関節症)。また、向中野らによると、温熱療法を行いながらのストレッチを同時に行なうことで、ストレッチの効果が高まったとあります。(向中野直哉 他:ホットパックとストレッチングの同時実施の介入効果に関する検討;理学療法学Supplement2016(0),0499,2017 公益社団法人 日本理学療法士協会)


 温熱療法は、病院で痛みの改善などの目的で用いられていますが、自宅でもセルフケアとして行うことができます。


①蒸しタオル…水で濡らしたタオルを軽く絞り電子レンジ500Wで約1分加熱すると蒸しタオルの完成です。タオルのままだとすぐに冷めてしまうので、ジップロックなどに入れて熱が逃げないようにしてください。火傷の危険性があるためタオルで巻いて患部に当てることをおすすめします。使用する時間は15~20分程度が目安です。


②入浴…入浴すると全身の血行が良くなるため、全身のコリの改善や疲労回復につながり、リラックス効果もあります。ぬるめのお湯(38~40℃)でみぞおちくらいまでの深さにしましょう。深く浸かってしまうと水圧の作用により心臓への負担が大きくなってしまいます。


以下のような方はお気をつけください

痛みの強い急性期、悪性腫瘍、血圧異常、心疾患、皮膚疾患部位、重篤な循環器の障害、妊娠中、感覚障害、出血傾向のある部位




 

 


 日本で開催されたラグビーワールドカップ(W杯)2019は、日本代表の素晴らしい活躍もあり、大きな盛り上がりをみせました。今年は、いよいよ東京オリンピック・パラリンピックを迎える年です。マラソン・競歩の開催地が札幌市に決まり、皆さんのスポーツへの関心もますます高まっているのではないでしょうか。


 野球やサッカーなど、小学生のころからスポーツに打ち込む子どもが増え、スポーツ外傷・障害が目立っています。


 スポーツ外傷とは、スポーツをプレイ中に大きな力がかかり、起きるけがのこと。ねんざや突き指、打撲、肉ばなれ、骨折などです。


 スポーツ障害は、習慣的に運動を繰り返すことや、トレーニング過多により起きる痛みなどのこと。いわゆる「野球肘(野球の投げる動作の反復によって起こる、主に肘の内側が痛む障害)」、「テニス肘(テニス、バトミントンなどラケットを使うスポーツによる、主に肘の外側が痛む障害)」、「ジャンパー膝(バレーボール、バスケットボールなどジャンプを繰り返す運動による、主に膝の前方が痛む障害)」などです。


 大人に比べて、子どもの体は、①骨が弱い ②筋力が弱い ③関節がやわらかい、などの特徴があります。このため、運動によって大きな負担がかかると、骨や関節に障害を起こしやすいです。また、成長期にあり、身長が急激に伸びる時期でもあるため、骨の成長に筋や腱の成長が追いつかず、関節がかたくなりやすいことも、けがの誘因になっていると考えられています。子どもが自らスポーツ外傷・障害を予防するのは難しいので、保護者や指導者が、特定のスポーツにより起こりやすい疾患について知識を持ち、発生や再発を防ぐことが重要です。


 例えば、野球肘は肘が下がった状態で投げると起こりやすいです。フォーム改善はもちろん、肘を上げて投げられるよう、肩をやわらかくすることも大切。テニス肘は、手首を外側に回したり、そらしたり(背屈)する筋肉は肘の外側に付いており、この筋肉を使い過ぎているため、付け根に炎症を起こして痛みとなります。負担の少ないラケットを選び、手首を使わず腰と肩でラケットを振るなど、正しいフォームをマスターすることも必要です。ジャンパー膝の予防には、クッション性・ホールド性に優れたシューズを選び、入念なストレッチや膝へのサポーター装着、運動後のアイシングなどが有効です。


 このようにスポーツ障害の原因として、身体の状態やフォーム、練習方法、ケアなどに問題があることが考えられます。一つずつ解決していくことが鍵になります。


 また、子どもは痛くても、保護者や指導者になかなか言い出せません。練習ができないことや試合に出られないことが嫌で、痛みを隠しているケースもあるでしょう。わずかな痛みや腫れ、関節の動きの悪さなど、子どもの症状を見逃さないでほしいです。早期に発見・治療できれば、それだけ早く、簡単な治療で症状を治すことができます。また、子どもたちの「競技を休みたくない」という気持ちを可能な限り優先した、スポーツを続けながらの治療も、早期であればあるほど可能なケースが多くなります。


 高齢化社会の進展に伴い、中高年のスポーツブームも活発になっています。ゴルフやテニス、ランニングに汗を流している中高年の方も多いでしょう。また、健康のために…とウォーキングや筋トレなど、日常的に運動する習慣のあるシニア層が増えています。適度な運動は、健康増進効果、介護・介助予防に非常に有効であることは、医学的にも確認・証明されています。ただし、やり過ぎは禁物です。スポーツ外傷・障害や突然死のリスクを高めることにもなりかねません。


 年齢とともに体力や筋力、骨量、バランス感覚の低下など、さまざまな身体機能が衰えてきます。それを自覚せずにスポーツを始めると、体がついていかず、けがをしたり、体調不良を引き起こしたりすることになります。


 ①:張り切り過ぎない、頑張り過ぎない ②:スポーツをする前後にストレッチなどの準備運動をする ③:こまめに休憩をとる ④:息切れや動悸などの症状が出た場合は休む ⑤:体に痛みや異常を感じたら、すぐ医療機関を受診する、といったことを守りながら、マイペースにやっていきましょう。


 スポーツ外傷・障害の診断・治療や予防をしたり、スポーツによる健康維持・増進をアドバイスしたり、サポートする専門家が、スポーツドクターという資格を持っている整形外科医です。


 「なるべく早く、そしてスムーズにスポーツに復帰できるように治療してほしい」「スポーツによるけがの再発を防ぎたい」「フォームなどを改善して、より高いパフォーマンスが出せるようになりたい」。そんな思いに応えるのがスポーツドクターの役割です。

 

 一方で、「すごく運動しているわけじゃないのに、加齢とともに肩や肘、股関節、膝といった部位が痛み出した。原因を知り、治療をしたい」「高齢でも、健康のために長く続けられる運動のやり方を教えてほしい」といった訴えに応えるのもスポーツドクターの役目です。


 「スポーツ」や「肩や肘、股関節、膝といった運動器」にかかわる整形外科的な症状でお悩み・お困りの方は、ぜひ一度、スポーツドクターの資格を持つ整形外科医に相談してみてはいかがでしょうか。



 

 リハビリテーション部では、リハビリ通院患者さんに向けて、自宅でも継続してトレーニングしていただける様に『自宅で出来る運動療法』パンフレットを作成しました。今回は第2弾として『足関節捻挫後の自主ケア』についてご紹介させていただきます。

 

 足関節捻挫といえば、スポーツをしている方には馴染みのあるケガだと思います。スポーツ活動中に発生する足関節捻挫は、スポーツ傷害全体の45%を占めると報告(Ferran N, et. al : Foot Ankle Clin, 3:2006)されており、練習中や競技中における受傷が多い疾患の一つであると言えます。その足関節捻挫をしてしまう動きや姿勢は様々ありますが、基本的には足関節の動きが正常と比較して逸脱した際に生じやすいと言われています。例えば、ジャンプの着地やダッシュの急停止、歩いているときのつまずきなどにより、足首が内側に巻き込まれる様な姿勢を取ってしまうことで生じることがあります。この動きによって、足関節(特に外側のくるぶし)周囲の靱帯組織に過剰な伸張ストレスが加わり、靱帯損傷や部分(完全)断裂というような軟部組織の損傷や、靱帯付着部の骨折が引き起こされる可能性が考えられます。靱帯損傷をした際は、直後より損傷部周囲の動作時痛や圧痛、荷重時痛を伴うことがあり、内出血や腫れが引き起こされるケースも多く見受けられます。しかし、受傷した状況や元々の身体機能がそれぞれ異なるため、痛みや腫れ方などでも個人差が大きく、ご自身での初期治療の判断が足関節捻挫の予後に大きく関わってくるのです。


 「もし自分が捻挫をしたら…」ということを頭の中で思い浮かべてみてください。その捻挫による痛みや腫れがとても強く、歩くのも辛い状況であれば最寄りの整形外科を受診すると思います。しかし、その痛みや腫れが軽度であり、歩くことも可能であれば整形外科を受診せず、痛みや腫れが落ち着くまで安静にすることを選択する方もいると思います。足関節捻挫受傷後に55%の選手が医療機関を受診していなかったとの報告(Smith R, et. al : Am J Sports Med, 14:1986)があります。


 この様に、足関節捻挫は損傷の程度が軽ければ気にせず競技や日常生活に戻る方が多いというのが現状です。もちろん、損傷した部位が自然治癒することもあり、その後も再受傷することがなければ元の生活に戻ることは可能であると思います。ただ、足関節捻挫に限らず、靱帯損傷を伴うケガは、しっかりと治療を行わなければ痛みや不安定感と長く付き合っていかなければならないケースも多くあります。スポーツにおける足関節捻挫の再発率は73%であり、そのうちの59%が足関節の痛みや不安定感などの後遺症を有していたと報告(Yeung MS, et. al : Br J Sports Med,28:1994)しています。足関節捻挫を治療する上では、予後における痛みや不安定感をいかに軽減できるかというところが重要になります。


 当院でも足関節捻挫後の痛みや不安定感に着目し、治癒の時期に沿うような理学療法を提供していきたいと考えております。受傷直後の患者さんに対しては安静・固定、冷却、圧迫、挙上などのRICE処置やその指導を行い、受傷2~3日後には、炎症症状を考えたリハビリテーションによる治療を行っていきます。リハビリテーションプログラムとしては、足の指や受傷した足関節以外の運動療法(指の屈伸・タオルギャザーなど)やマッサージなどの徒手療法、超音波治療、低周波治療器による電気治療などを実施します。その後、治癒の段階に応じて足関節の可動域訓練や部分的なストレッチ、スクワットやチューブを用いたトレーニングを行っていきます。病院でのリハビリテーションも重要ですが、自宅で行うケアも大変重要になります。そこで、リハビリ通院患者さんには帰宅後も引き続きご自身でトレーニングを継続して頂きたいとの思いから、『足関節捻挫後の自主ケア』のパンフレットを作成致しました。パンフレットは、イラストを多用し、どなたにもわかり易いように工夫しております。


 足関節捻挫は、どんな方でも起こり得るケガの1つであると思います。その中でもスポーツを継続したいと考えている方にとってはしっかりと治さなければならないものです。当院リハビリテーション部でもケガによって日常生活やスポーツ活動に支障が出てしまった方のサポートに全力を尽くさせていただきたいと考えております。


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