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 今回は、病院にかかると必ず記入する問診票の重要性についてお話します。


 問診票とは、患者様が医療者へ情報を伝える最初の手段です。患者様がスムーズに診療を受けられるよう、「受診目的」や「主たる訴え」などを自己申告してもらう用紙です。


 また、患者様が受診に至った背景として、既往歴や薬歴、他院の受診歴、妊娠の有無などを確認する目的にも使われます。問診票は、患者様と医療機関をつなぐとても大切な診療ツールとなっています。さらに、患者様も診察前に、落ち着いて文章にまとめることで、伝え忘れを減らすことができるのです。


 問診をしっかりとることで、診察がスムーズに進むようになり、診察時間短縮につながります。また、リスク管理の意味でも大切な役割を担っています。


 問診票は、主訴(主な症状)が端的にまとまっているのが理想的です。


◎主訴を端的にまとめる

 主訴とは、現在患者様が最も困っていること、つまり病院を訪れている理由です。

患者様にとっては、これが最も伝えたい情報だと思います。医療者が問診票に求めているのは、事細かな状況ではなく、だいたいの病状が把握できることです。パッと見てわかる程度の分量で、最も困っていることを書いていただければと思います。


【ポイント】

1. どのような症状か?(例:痛い・しびれる・動きにくい・腫れている)

2. 症状はいつ頃からか?(例:約○日前から)

3. 症状が出たきっかけは何か?(例:転倒・ぶつけた・ひねった)


 つらい状況下で問診票をしっかり記入することは大変だと思いますが、より良い診療ができるように、ご協力いただければと思います。






 関節リウマチの治療には目標となる3つの柱があります。


●痛みをやわらげる

●関節の変形や破壊を防ぐ

●関節の機能を保つ     …です。


 これらの役割を中心となって担うのが薬物療法です。


 先ほど述べたように、現在の関節リウマチ治療は、過去の対症療法から、早期発見〜寛解を目指すものへと大きく流れを変えつつあります。その実現のために新薬が次々と開発され、薬の選択肢は広がっています。

 

 関節リウマチに用いられる薬は大きく分けて2種類あります。一つは関節リウマチそのものを治療するための薬で「疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD、ディーマード)」と呼ばれます。もう一つは関節の痛みを抑えるための薬です。

 

 代表的なDMARDは、「メトトレキサート(MTX)」です。MTXは関節リウマチの原因となる免疫細胞の過度な活動や増殖などを改善する効果があります。効果が出るまでの期間が平均2〜3週間と早く、いったん薬が効くとその効果が持続しやすいという特徴があるため、関節リウマチ治療の中心的薬剤として用いられています。DMARDは関節を構成する骨や軟骨の破壊が進むことを抑えますが、関節が破壊されることに伴う痛みを直接抑える効果はありません。そのため、関節の痛みを抑えるステロイドや非ステロイド性消炎鎮痛薬といった薬を補助的に用います。


 MTXなどの従来型DMARDの効果がない場合は、「生物学的製剤」や「分子標的型抗リウマチ薬(JAK阻害薬)」を用います。


 生物学的製剤は、最先端のバイオテクノロジー技術によって生み出された医薬品(バイオ医薬品)で、特に関節破壊の抑制効果に優れています。最初の生物学的製剤は2000年代初めに認可され、多くの症例で関節リウマチを寛解状態に持ち込むことが可能となりました。とても有効な薬ですが、点滴か注射での使用に限られること、肺炎や結核などの感染症に注意が必要であること、非常に高価であることが問題点として挙げられます。


 生物学的製剤には、先行的に開発された「バイオオリジナル」と、後続品の「バイオシミラー」の2種類があります。バイオシミラーは、バイオオリジナルの特許が切れた有効成分を用い、抗体や遺伝子組み換え技術などを応用してつくられます。バイオ医薬品の場合、薬の分子構造を完全には再現できないためシミラー(類似)と呼びます。バイオオリジナルと

効果や安全性が同等かを比較するため、実際の患者さんに使用する臨床試験を行い、安全で有効な医薬品と確認された上で製造販売が承認されることになっています。バイオシミラーはバイオオリジナルと比較して価格が6〜7割と安いため、費用負担を理由にこれまでは生物学的製剤に手が届かなかった患者さんには朗報といえるでしょう。


 分子標的型抗リウマチ薬は、近年開発された新しい薬です。リンパ球などの免疫細胞内にあるヤヌスキナーゼ(JAK)と呼ばれる酵素の働きを阻害することで、炎症や関節破壊を抑える薬です。生物学的製剤と同等、もしくはそれ以上の効果を発揮すると報告されています。また、内服が可能で利便性の高さも大きなメリットです。ただし、新薬であるため長期の副作用、安全性についての実績がまだありません。生物学的製剤と同様に高額であるのも難点で、現状では初めに使う薬ではなく、基本薬を十分に使っても効果が不十分な患者さんに使います。


 以上、さまざまな薬がありますが、どれを使うかは、それぞれの患者さんで条件が違います。痛みの程度、痛みやこわばりを感じる部位、炎症の程度、基礎疾患や合併症の有無、年齢や経済状況など、患者さん一人ひとりの状態に合わせ、もっともふさわしい薬を選択したり組み合わせたりすることが治療の鍵といえます。


 近年、関節リウマチと診断され、早期から臨床的寛解や低疾患活動性を目標に治療されている患者さんは、手術やリハビリが必要になることは少ないかもしれません。しかし、すでに関節破壊による機能障害が進行している場合、機能回復目的や変形した関節の見た目を改善する目的で、患者さんに合わせてさまざまな外科手術を検討するケースもあります。

 また、リハビリには理学療法、作業療法、装具療法があり、これらを通して体の機能回復を目指すものです。炎症の強い時期に過度に負担をかけてしまうとかえって関節破壊を進行させてしまう可能性があるので、状態に合わせてどのような治療介入が適切か専門的に検討する必要があります。


 関節リウマチは慢性的に経過するため、長い期間にわたって診察を受け、治療を続けていく必要があります。病気とは長い付き合いになるので、あせりは禁物なのですが、患者さんやご家族にとっては、長くなるほど気がかりなことも増えてきます。中でも、医療費の問題は大きくのしかかってくるでしょう。最新の治療薬は費用がかかり、大変だと思います。また障害が重くなり、日常の動作が不自由になってくれば、介助の手が必要になることもあります。このような患者さんの療養生活を支えるための、さまざまな福祉制度があります。ただし、福祉サービスは自動的に受けられるわけではなく、申請しなければなりません。ぜひ専門医や市区町村の担当窓口などに相談して、上手に活用するようにしてください。


 最後に、繰り返しになりますが、関節リウマチは病気が進んでしまう前の初期に発見し、すみやかに治療を始めることが、良い経過へと導く最重要ポイントです。ちょっとでもリウマチの心配があるなら、悩んでいる時間がもったいないです。早期受診で、リウマチとの未来、付き合い方を変えられる可能性があります。すぐに信頼できる医療機関、医師に相談してください。



 今回は関節リウマチのお話です。


 以前も取り上げましたが、昨年7年ぶりに関節リウマチの診療ガイドラインが改訂されるなど、近年の関節リウマチ治療の進歩は目を見張るものがあります。あらためて症状の特徴や最新の治療薬などについて、今回と次回の2回にわたって連載します。


 関節が曲がりにくい、関節が腫れている、関節が熱を持っている。重いものを持つと手首がズキンと痛む、階段の上り下りで膝がズキンと痛む、お風呂に入る時に全身が痛む。起きて10分ぐらいは指がこわばって動かない、手がギシギシする、足首がカチカチでロボットになったみたい、首や肩がギリギリと鳴っているよう、全身がだるくて動きづらい、だるくて力が入らない、体が鉛のように重い。ボタンを外しにくい、箸が上手に使えない、靴紐を結びにくい、ペットボトルなどのキャップを開けにくい、ドアノブを回しにくい、フライパンや鍋が使えない、歩くと足指の付け根が痛い…。

 

 このような症状が現れたら、それは関節リウマチのサインかもしれません。


 関節リウマチは、関節に起きた炎症によって腫れや痛みが出る病気です。炎症が続くと骨や軟骨が破壊されて、関節の機能低下や変形が進行し、日常生活に支障をきたします。現在、日本には70万~100万人の患者さんがいるとされ、まれな病気ではありません。男性よりも女性の方が約4倍も多く、発症年齢のピークは30~50代ですが、60歳以降に発症する方も少なくありません。遺伝病ではないので、関節リウマチにかかった家族はいないから自分は大丈夫、との思い込みは禁物です。


 全身の関節に症状が出る可能性がありますが、特におかされやすい部位があります。それが手足の指の関節で、ほぼ全員に病変が起こるといってもよいところです。


 関節リウマチは段階を追って長い経過をたどる病気ですが、進行具合は個人によってかなり差があります。病気になって長期間になるにもかかわらず、関節の変形がほとんどみられないケースがある一方、どんな治療をしても症状が改善せず、関節の変形が年単位で進むケースもあります。多くの場合、ゆっくりと始まり、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら進んでいきます。


 関節リウマチがなぜ起こるのか、その原因については不明な点が多いのですが、いくつか分かっていることもあります。関節リウマチは現在、遺伝的な要因と後発的な環境的要因が複雑に関係し合い、異常な自己免疫反応を呼び起こして発病すると考えられています。


 免疫は本来は外部から細菌などの異物が入ってきてもそれを排除して、自分の体を守るように働く仕組みです。しかし、間違って自分の体を形づくっている細胞やタンパク質を異物とみなして、反応する抗体ができてしまうことがあります。この自己抗体が、自分で自分の体の成分を攻撃したり排除したりするようになり、さまざまな病気が起こるようになります。これが自己免疫疾患です。自己免疫疾患は関節リウマチ以外にもいろいろあり、代表的なものは関節リウマチと同じ膠原病グループの病気です。全身性エリテマトーデス、強皮症、シェーグレン症候群、ベーチェット病などがあります。


 関節リウマチの発症と関連の深い重要なリスク因子は「喫煙」です。タバコを吸う人は、吸わない人よりも2倍の発症リスクがあるとされ、喫煙期間が長いほどリスクは高くなると報告されています。さらに注目されているのが歯周病のリスクです。歯周病菌の一種である「Pg菌」が持つ酵素によって関節リウマチに関連する自己抗体が増加することが明らかになっています。そのほか、精神的ストレスや過労なども免疫系の働きに影響を及ぼし、発病のリスクになることが考えられます。


 診断は、まず問診を行い、日常生活の状況や関節の痛みなどについて詳しく聞き取ります。次に全身の関節を診て、痛みのある関節と腫れている関節がどのくらいあるかをチェックします。続いて各種の検査を行います。主に血液検査と関節のエックス線撮影です。血液検査では赤血球沈降速度(血沈)やC反応性タンパク(CRP)といった炎症を示す値が高くなっていないか、そして関節リウマチで値の上がることが多いリウマトイド因子(RF)などを測定します。関節のエックス線撮影では関節の隙間が狭くなっている所見や、骨のびらん、さらには関節の変形がないかを診ます。必要に応じて、超音波検査やMRI検査を行うこともあります。こうした診察所見や検査所見から関節リウマチの診断基準に照らし合わせて総合的に診断していきます。


 典型例の関節リウマチの診断は容易ですが、中には診断が難しい症例もあります。血液検査で反応がみられない関節リウマチも約2割存在することが分かっていますし、何も病気がなくても関節リウマチの反応が出ることも多々あります。また、関節リウマチと同じような関節の痛みが出る病気はたくさんあるので、それらの病気の可能性を否定するためにも前述のさまざまな検査が必要となります。関節リウマチの診断がなされたらすぐに治療を開始します。


 関節リウマチは、かつては炎症を上手にコントロールする治療法がなかったため、一生治らずにいずれ日常生活が制限されてしまう病気だと思われていました。仕事や妊娠・出産をあきらめなければならないことも多くありました。いわゆる難病であったわけですが、近年、特にこの20年間ほどで関節破壊の進行を抑える薬が次々と使えるようになったことと、早期診断の精度が向上したことによって関節リウマチ治療は格段の進歩を遂げました。患者さんがリウマチを原因に「仕方ない」「無理だから」と思ったりあきらめたりするシーンは以前と比べると格段に減っています。逆に「できること」はどんどん増えています。


 昨年、日本リウマチ学会による「関節リウマチ診療ガイドライン」が7年ぶりに改訂されました。「患者さんと医師が話し合い、共同で治療を決める」という考え方に沿い、治療の決定に必要な根拠(治療原則など)が解説されています。


 ガイドラインでは、関節リウマチ治療の重要な目標を「適切な治療によって症状落ち着いて病状が進まない『臨床的寛解』や、寛解までには至らなくても症状が落ち着いている『低疾患活動性』を目指す」としています。診断技術と治療法の進歩によって、病気自体を追い出すことはできなくても、症状の悪化を抑えるだけでなく、より良い暮らしを取り戻すことが可能になっているということです。また、ガイドラインでは最新の治療薬の組み合わせと投与のタイミングについて治療の進め方(アルゴリズム)を提示しています。薬物治療以外の外科手術やリハビリテーションなどの治療でもアルゴリズムを作成し、薬物治療の効果と併せ、患者さんの生活の質を高める方策をまとめています。


 最新の標準治療や治療法・治療薬の推奨度に関する情報を診療の現場に行き渡りやすくすることが、リウマチ診療の質を保ち、(診察が受けにくい地域などでの)治療格差を解消するために重要で、ガイドラインがその役割を担います。


 ただし、治療の効果を最大限に得るには、早期発見・早期治療が何よりも重要です。


 最近の研究で病気の全経過20年ほどでおかされる関節の40%は、症状が出るようになって最初の4年間のうちに、破壊が進んでしまうことが明らかになっています。そのため、この初期の4年間は関節リウマチ治療にとって特に大切で、「治療の機会が開かれている窓」とも呼ばれています。


 しかし、関節リウマチの初期は、はっきりした症状がない場合も多く、倦怠感や微熱、体重の減少、貧血といったあらわれ方をすることもあり、リウマチとは気づかない人もいます。関節の痛みや腫れ、こわばりといった、関節リウマチの疑いが強い症状があっても、最初は近くの整形外科や一般内科を受診する人もいるかもしれません。しかし関節リウマチは、ベテランの医師でも診断が難しい面があります。関節リウマチには、「この検査で陽性なら間違いない」といえる診断の決め手となるものがないからです。ですから、関節リウマチが疑われる場合は、初めから「リウマチ科」を標榜する整形外科を受診することをお勧めします。経験豊富なリウマチ医であれば、さまざまなあらわれ方をする関節リウマチのサインを見逃さず的確な判断ができますし、新しい診療ガイドラインに沿った最新の治療法や関節リウマチ研究の動向にも通じているからです。


 次回は、関節リウマチの治療についてお話しする予定です。

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